主人公は女子高生で、家族は彼女以外全員聾者。家業は漁業で彼女もそれを手伝いながら音大を目指す。
と、この映画の設定を簡潔にまとめてみると、やや健常者には共感しにくそうではあるが、実際観てみたら凄い映画だった。3回泣いた。
まず、出てくる人物一人一人の描写が濃くて深い。
漁師のパパは言葉はガサツで下品で、ママは鬼淫乱だけど2人とも海と漁と家族が大好きというのが伝わる。この2人の役者の演技力は勿論、ルックスが絶妙で味出過ぎで最高だった。
主人公の声質も顔立ちも体型もこの子じゃないとダメってくらい完璧に合っていた。
キャスティングの妙に脱帽せざるを得ない。
主人公の歌声は心地良く、歌う場面の演出もミュージカル調になり過ぎず自然で気持ち良かった。
物語としても主人公だけじゃなくて皆んなに感情移入できるので気づいたら「俺のために歌ってくれ」のシーンで号泣していた。
分かり合えなさ、疎外感、
それらを超越した絆。
映画の設定は自分とは遠くても、聴こえる人と聴こえない人との間のこんな思いを共有できるのは他の映画では得られない貴重な体験かもしれない。
一部無音の場面があり、その場面がかなり重要なので絶対に映画館で観たほうが良い。
昔、映画館で観たバベルを思い出した。耳鳴りがするような静寂の演出。この映画においてはここで！？っていうあの使い方、まさに天才だなぁって思った。
5月現在で今年1番好きな映画。
