かたゆき

コーダ あいのうたのかたゆきのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.5
彼女の名は、ルビー・ロッシ。
寂れた港町で漁業を営む家族とともに暮らす平凡な女の子だ。
勉強やスポーツが特に出来るわけでもなく、人が羨むような特技もない。見た目だって普通、交友関係もいたって人並。
だけど、彼女には他の人とは違う特徴が一つだけ。
それは、彼女以外の家族全員が耳の聞こえない、いわゆる聾者だということ――。
そう、両親はもちろん彼女の兄も一切耳が聞こえず、言葉を話すことも出来ない。
家族との会話は全て手話、食事のときも食器の音以外何も聞こえない。
どうしても他の人とコミュニケーションを取りたいときは、唯一の健常者であるルビーの力を借りなければならなかった。
彼女はいわゆる〝コーダ(聾者の両親に育てられた子供)〟。
それでも家族とともに充実した日々を送っていたルビーは、ある日、ふと思いついて高校の合唱クラブへと入部することに。
緊張しながら初めて人前で披露した歌声。
顧問の先生は、指導を続けてゆく中で粗削りながらも彼女の歌声に秘められた可能性を感じるようになる。
ボストンの音楽大学への進学を薦められるルビー。
でも、私がいなくなれば家族の生活はますます大変なものに。
思い悩んだ末にルビーが出した結論とは?
耳の聞こえない家族の元で育った17歳の女の子の青春を瑞々しく綴ったヒューマンドラマ。

アカデミー作品賞受賞ということで今回鑑賞。
感想は、良くも悪くもとにかくオーソドックス。
全編通じて、何処かで見たような映像と何処かで聞いたようなお話のてんこ盛り。
主人公カップルが崖の上からキレイな森の湖に飛び込むシーンなんて、この手の青春ドラマでもう何回見てきたことか。
誰もいない湖面で2人泳ぎながらキスするとか、トム・クルーズの『カクテル』ぐらいから受け継がれてきたもはや青春映画のテンプレなんでしょうね。
クライマックスの両親が見守る中での発表会なんかも、まぁ~~既視感満載。

でも……、このベタさ、自分はけっこう嫌いじゃない。
それはやはり、主人公をはじめとする登場人物誰もがみな魅力的だからでしょうね。
この家族、障碍を持っていても誰も自分を憐れんだりしていない。
自分たちだけで健常者と普通に渡りあおうとするし、頼るべきところはちゃんと頼るしたたかさも持ち合わせている。
そんな両親を愛していながらも世間に引け目を感じてしまう主人公も気持ちが分かるぶん切ない。
何かと言うと家族の責任を前面に出し娘に依存しようとする両親も最初はちょっとウザかったですけど、最終的には娘を清々しく送り出すところは素直に感動しました。
妹にちゃんと自立した道を歩んでいって欲しいと願う兄も凄くいい奴。
妙に下ネタが多いところも、障碍者を必要以上に美化しないという決意が感じられて好感持てますね。

自分は最後まで清々しい気持ちで観ることが出来ました。
ルビー、これからもっと幸せになれよーー!
かたゆき

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