劇場で観たい

コットンテールの劇場で観たいのネタバレレビュー・内容・結末

コットンテール(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

家族の要であった母親の介護と死を核に介護の担い手であった父親、離れて住む息子一家との乖離と融合を描く作品。
パトリック・ディキンソン監督を投影している息子に重要な台詞を委ねており、中盤息子の感情吐露に息子が生まれて以来の父子の葛藤、ラストシーンの父にかける言葉で将来を暗示している。

リリー・フランキー、錦戸亮、木村多江、高梨臨、ハインズ父娘、工藤孝生、恒松祐里、どの演者も素晴らしく、度々画面いっぱいに大映しにされる表情が言葉以上に内面をさらけ出している。畳みかけるような丁々発止のやり取りは少なく間を置いて発せられる言葉の重みが胸に響く。
演者が作品を観て説明がゴッソリ削ぎ落とされていたと感じた作品、初回は物足りなさを感じたが、2回3回と回を重ねるごとに奥にあるものが見えてきた。是非複数回観て欲しい。

介護をする側を経験した視点から観ると、日頃独りで介護を担っている閉塞感、時おり訪れて手伝おうとする息子の行為はややもすると介護のペースを乱し、日々一所懸命介護しているのを批判されていると感じてしまう、息子は息子で日頃介護出来ていない焦燥感、入れてもらえないイラつき、どこの家庭にもありがちな感情が詰まっていた。観る者の立場により身につまされ、自分とは違う立場の理解も出来る気がした。介護した者もこれから介護される身になるかもしれない、今どんな立場であっても本作を観ることによりいろいろと考えさせられる。

チラシにもある「長らく疎遠だった」を頭に置いて観ると違和感がすごい。父と息子は決して疎遠ではない。母の闘病中にも両親宅を訪れていおり、ピンチにも呼ばれたのか訪れていたのか協働、臨終の場面にも駆けつける息子。何故この紹介文を採用したのか6回観ても違和感はなくならない。言葉のチョイスが違うと思われた。本編内の言葉を借りれば父は息子を自分の世界に入れようとしなかったが適切だろう。

エンドロールの途中で席を立つ人が目立つのは全て英字だからだと思われる。英語に堪能でなければ追い切れない情報量。右側の空きスペースに日本語を併記したら最後まで観るのではないか。もしデザイン?上できないのであれば、英語表記のままでも構わないのでパンフレットに全て掲載して欲しかった。パンフレットのキャストにはイギリスに同行した孫の演者紹介すらないのが残念である。
劇場で観たい

劇場で観たい

劇場で観たいさんの鑑賞した映画