八畳

ゆるキャン△の八畳のレビュー・感想・評価

ゆるキャン△(2022年製作の映画)
4.8
高校時代が明確に「過去」となりつつある、20代後半に差し掛かった野クルたち。時は否応なく過ぎ、望むとも望まざるとも様々なものが変わっていく……
高校生のころのような底抜けの天真爛漫さはさすがに薄れ、誰もかもなんかしらの責任なりなんなりを抱えている。その変化に一抹の寂しさを覚えなくはないが、野クルメンバーたちは「年齢を重ねてできなくなったこと」と「年齢を重ねたからこそできるようになったこと」をしっかりと見据え、その中、現実において自分たちができることへチャレンジしていく。アウフヘーベンなんだよね。子供であることにも大人であることにも偏らない。
思い入れある世界が変わるのは受け入れ難いものだ。それはわかるし、成人した野クルたちを見たくないという意見も共感はする。あとリンちゃんその職場は辞めたほうがいいとは本当に思う。とはいえ「時は流れる」のだ。抵抗できないその事実を前にして、いかにひねくれず諦めず、自己を実現していくか。ゆるキャン△はファンタジーじゃないから、たとえば劇中のように自分たちでキャンプ場を作ろうと思い立てば我々だってできちゃうんだよね。少なくとも異世界転生するよりは実現可能性がある。そのように、ゆるキャン△の世界は現実世界との距離が近い。だからこそ野クルたちの感情やそれを踏まえての行動は視聴する我々の実生活にも響く。
劇場版ゆるキャン△の野クルたちと私はだいたい同じ歳だ。そろそろ体にも不調が出てくるし、いろいろなことに押し潰されそうになる。そのままただ生活をやり過ごすだけになりたいとさえ思ってしまうことがある。しかし、「青春」は再帰できるのだ。大人の庇護のもと自由にすることだけが青春じゃない。いち社会人として生活を営みつつ、その中での「青春」を成すことは可能だ。そんなことを感じたりした。娯楽映画とするにはちょっと現実と近すぎてウッ……ってなることもあるけど、だからこそ自分の糧にできる映画だと思う。
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