Nick

シン・仮面ライダーのNickのネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

IMAXで観た!良くも悪くもこれこそ仮面ライダー!という映画!正義の味方とは、というような。俺はめっちゃ好き!

先に自分が感じた弱点を挙げると、テンポの良さが故に、画やストーリーに対してインパクトが付いて来なかった感。だからか入れ込める度はかなり低め。ここは多くの人に言われている通りでかなり致命的なのかなと。
加えて画については後半どんどん暗くなっていったので分かりやすさはなくなっていたかも。IMAXで観れて良かった!
台詞が難解だったりで聞き取りに苦労するのは最早定番な気もするけど、それを抜きにしても音声がウルトラマンよりは聞きづらかった。
まぁあとやはり不意に駆け足なのが何度か。唐突な場面切り替わりは特撮あるあるだし昭和のそれのオマージュだろうけど。画と劇における連続性を求める場合はライダーだとクウガ的なものになるのだろうか。
CGはCGと分かりやすいCG。良くはなかった。
キャラの描かれ方がめちゃくちゃ薄い!
明確な弱点だと感じたのはこのあたりだと思った!弱点いっぱい!とてもじゃないけど完璧を求めて観る作品ではない!

あとそこにあえて加えると、これはオリジナルらしさだとは思うけど、特に序盤に強かったダークさは人によっては駄目だろうなぁとか。キャストとか華やかだけど純粋な娯楽作ではないという雰囲気になる。深みを求めて観るべき作品にはなってないのに。
まぁ原点が元々はそういう作品だった訳だから、原点に立ち帰ってその色を蘇らせる方向だと万人受けではなくなるのはある種あたりまえですらある。切り替わり早いのもここらへん関係はありそう。

そして映画本編ではないけど、SHOCKERアプリの鑑賞回数報告特典はマジで禁断の果実に手を出したなぁというか…。これから増えるのかもね、新しい搾取の構図!おのれショッカー!

本編はキャストも華やかでそれに負けないアクションの画的な強度がたまらない!ライダーキックやべえ。
最初はスイカのように割れていく戦闘員に面食らったけど、よくよく考えたら先述の通り「仮面ライダー」ってそういう怖さのある作品だったよなぁと。
10年くらい前、まだ中学生とかそこらで一応少しは見ておくかと見ていた初代の序盤の記憶が遂に活かされた!溶けて消える皆さんもあの逆再生消滅ですよねぇ…。
あとやはりかなり昔に読んだ石ノ森章太郎作品のイメージがそこらへんを補完してたとも感じている。

池松壮亮は正に新しい本郷猛だったなあ。すげー良かった。慟哭とか表情とかとにかくまずは彼に魅せられる映画だった。そんでサイクロン号乗ってるライダーがひたすらにカッコ良すぎる!
浜辺美波も中盤にマジかーってなったけど、そう感じさせたのは構成とかストーリーではなく彼女の演技が良かったからだと思う。つかタートルネックがめちゃくちゃ衣装として強かった!カレー(?)を掻き込むシーンも良かった!何というか画になりすぎている。
この2人の関係性を築いていく過程での2人の演技の質がとにかく素晴らしかったし、2人とも本当にカッコよかったなぁ。

柄本佑は、一文字隼人というキャラクターがやはり今のシリーズの礎を築いたキャラクターだと思うし、だからなのか役柄としても物語上の意味を超えて作品そのものを一気に加速させる立場だったと思うけど説得力のある演技だった!何ならもっと見ていたいキャラクターだったなあ、タイミング的に掘り下げあまりなかったし。華のあるキャラだったし演技だった。ラストもカッコいい!
Wライダーのワクワク感は異常。ライダーキックはやっぱりカッコいい!

森山未來はファイトスタイルが森山未來じゃんってなった。めっちゃ演技良かった!でもイチローくんどこでそんな森山未來みたいなファイトスタイル身につけた!?何だかんだ仮面ライダーは泥臭いバトルが1番映えると思う。だから1号VS第2号より1号VS第0号の終盤が自分は好き!
てか漫画途中までしか分からんけどサソリさんめちゃくちゃな退場だったな…。常連2人が見守る中では笑うわ。観ている間はテンション高すぎて分からなかったけどエンドロールでキャスト分かってびっくり。
SHOCKERサイドだとハチさんはもう少しルリ子との関係性に掘り下げ欲しかったかも。ハチオーグ戦は映像がカッコ良かった!
ロボット刑事Kはタカギラス氏のおかげで存在だけは知ってた!良かった!
ショッカーライダーが森山未來の部屋にいる絵面なんかもめちゃくちゃ良かった!

あと常連2人のラストもじわっとくる良さがあった。本郷とのシーンもめちゃくちゃ良かったし。クサいんだけどね。
そして明確にシン・ユニバース企画はただの企画でしかないのが2人のお陰でハッキリして良かった、そもそも「エヴァ」入ってる時点でグッズ以外の何らかの展開を期待することが違うよなあ。てかあれ自体そんなにいらなくないですかね…。

極端な話、映画自体の褒めどころはほとんどキャスト、デザイン等のビジュアル的なところがメインな気はする。

本筋のストーリー自体はSHOCKERの中でも一部の緑川家の関係者中心にちょっとバトっただけで、アイとかKとか死神とかそこらへんはこれからも戦いは続くエンドだったしで公開前から公式が盛り上げてた「持続可能な幸福〜」とかは最終的には評価しづらいかなと。正直ラストのライダースーツがカッコいいに繋がるだけ感。

ただ全体の流れとしては愚直なまでに人と人の繋がりを描いていたなぁと。漫画ではまだSHOCKERサイドに横の繋がりがあったように見えたけど、本作ではクモにもコウモリにもサソリにもイチローにも仲間と呼べるような横に並び立つ人間はいなくて、彼らは完全に他者との繋がりを放棄したことで破滅へ向かってしまったのかな。
ハチに関しては歪な形とはいえ人と繋がることを継続していたから2人には許されることができたのかもね。
あとサソリの処理は初代TV版のさそり男が実は本郷にめちゃくちゃ近しい人だった(大昔に見てそんな雑に消化するエピソードなんかと思っていた)のがアレに変更な訳で、そうした意味でもやっぱり今作では個人のエピソードに振るより、人々の繋がりの話にするという意思が感じられるところだったと思う、アレだけど。

書いていて思ったけど最早ストーリー強度云々は思想的に破綻してないからどうでも良くてシンプルにライダー側が格好良かったから満足してる節もある…。



そしてこれはコロナ後の世界だからこそ余計に強く感じるのだけと、そうした横軸の繋がりに加えて時間という縦軸の繋がりを描いていたことも印象的だった。それは一文字登場以降の継承というテーマで語ることが出来るかなと。

コロナ禍で我々には物理的な距離が生じていたけど、そこを経ての前後で伝えきれずに世界からこぼれてしまったものというのは、例えば何かの文化だったり、誰かの功績であったり、あるいはもっとちょっとした日常のささやかな記憶や思いとか、そうしたものが沢山あるのだと思う。

本作の企画はコロナより前からだから直接的な影響はあまりないとは思う。
それでもこの映画では緑川博士、本郷、ルリ子、一文字、そしてイチローが他者と繋がることで思いを伝え、時にその思いを相手に託していくシーンが何度もあって、最後に託された人物が、自分で選んで掴んだその繋がりと受け継いだ思いを大事に抱えて、周りと共に前に進んでいくのは様々な文化に満ちた我々の社会への確かなメッセージだよなぁと。
そしてクモやコウモリ、サソリといったオーグたちが物理的にも心理的にも他者と距離を取りすぎて、誰とも何も共有することが出来ないまま、爆発するでもなく本当に人知れず痕跡を残さないよう泡となり散っていくのはとても悲劇的であったと思う。コウモリの最期の言葉は唐突ではあったけど象徴的だった。

唯一KKだけはイレギュラー的なのかもしれないけど、それでも彼は継承ではなく復讐という点で最後まで自己満足のための戦いと言えてしまうのがこれもまた悲劇であったかな。
一方でイチローはルリ子を思う気持ちが残っていたからこそ、最後の最後で繋がりを取り戻すことが出来て、そこは本当に良かったなぁと。

だから我々も優しさでもって人と繋がり、互いの思いを伝え合うことを諦めてはいけないのだと感じた。

あと多分に散りばめられたオタク的エッセンスや石ノ森作品オマージュも継承や繋がりというテーマで考えると、本作に落とし込むことで、改めて昔こんなものが実は…というようにオリジナルのネタや作品そのものの継承やそこから世代間の繋がりを生み出す、そんな意義が込められていたのかなと。
そういう意味では本作自体の色々も割りと残りやすい時代ではあるけど語り継ぎたいものかもと。池松壮亮の歌唱が良かったとか浜辺美波は美しかったけど劇中では着なかった赤コートもカッコ良さげだったとか柄本佑がプロモーションの中で語ったクウガへの思いだとか、話題はたくさん提供されたよなあと改めて。
作品そのものが弱点も多くて結果的に賛否両論で議論を生みやすい感じになってるけど、そこの議論でここはこうでみたいな話が出るのであれば、もしかするとそれについては思惑通りな面もあるのかも。


最後にサイクロン号!めちゃくちゃカッコ良かった!冒頭シーンも、その後ライダーが爆走するシーンも、本郷とルリ子が2人乗っているシーンも、コウモリを追って飛ぶシーンも、逃げた直後キャンプめしの横で停まっているシーンも、一文字が本郷を追うシーンも、山の麓で2人話しているときに停まっているシーンも、ショッカーライダーとのバトルシーンも、最終決戦も、しっかり全パート活かされていて最高だった!
個人的に1番好きなのは歩いている本郷とルリ子に自走して付いてくるシーン!犬みたいでめちゃくちゃかわいい!!


特典カード2枚は仮面ライダーと緑川ルリ子でした!初鑑賞で出るカードとしては大当たりでしょ!やったーー!!!
Nick

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