無彩

シン・仮面ライダーの無彩のレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.0
名作。

これも”映画”なんだ。理屈じゃない。

初っ端、見せる気のない赤と青の映倫のロゴから東映の反骨精神を感じ、これから始まる何かにワクワクさせられる。

そして、いきなりのカーアクションに興奮。今時、日本でカーアクションをやる映画はあまりない。トラックが落ちるとこも最高。どうやって作っているのだろうか。

テレビ版の『エヴァンゲリオン』の良さが理解できなかったことから、庵野秀明監督には苦手意識があり、劇場版エヴァも他のシンシリーズも観ておらず、この映画も鑑賞するつもりはなかったが、YouTubeの冒頭予告編の面白さから映画館に足を運んだ。予想はバッチリ的中。

庵野監督は仮面ライダーが現れた時の下からの寄りやバックルが回る時の音など昔の演出を踏襲し、懐かしさを演出。パンフレットにも「新しい仮面ライダーではなく、オリジナルが好きになるように作った。」と記述があり、庵野監督が本当にオリジナルをリスペクトしているのが伝わる。とはいうものの、当時は出来なかった演出もVFXなどの技術を使い、現在でも鑑賞に耐えうる新しい特撮表現を誕生させることに成功している。

とにかくアクションが最高。空中戦が最高。バイクで空中を飛ぶのが最高。良いところを挙げれば枚挙にいとまがないが、最後のバイクでの戦闘シーンはこの映画の興奮度でいえば、クライマックスだと思った。映画の終盤で確実に一番の盛り上がりを作ることは当たり前ながら難しいが、しっかりと撮りきっている。

個人的な視点で言えば、過度な暴力表現としての『仁義なき戦い』や『バトル・ロワイアル』、人情活劇としての60年代の任侠路線など古き良き東映映画の流れもしっかり汲んでいるように思える。近年でいえば、この映画と同じく東映の紀伊宗之氏が企画・プロデュースした三池崇史監督の『初恋』(2020)にもこの精神を感じた。最後、二人でチョウオーグのアジトに入っていく所なんかは東映往年の名作『昭和残俠伝』シリーズで高倉健と池部良が最後にカチコミするシーンにも重なる。

また、役者を注目すると、浜辺美波がバッチリ役にはまっていた。今まで彼女にそれほど注目していなかったが、この凛とした役は新たな発見だった。ボブカットもGood!

庵野監督の独特なカメラのアングルさえもこの映画のアクセントになっている。

庵野監督のことも出演者も全員好きになってしまう、最高に元気になるムービーだ。本当に生きる力が湧いてくる。

最後にこの映画に関わったすべての人に感謝を送りたい。
無彩

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