ねじまき

劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略のねじまきのレビュー・感想・評価

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テレビシリーズからの大ファンなので、結末等知った者としての感想です。10年経った今でも幾原監督の演出は古びた感じがありません。スタァライトの古川監督の様に、演出手法を取り入れた方は出てきていますが、幾原作品の味は未だ唯一無二のものであると感じます。新作カットには、さらざんまい等近年の作品で使われた実写を用いた表現が取り入れられています。荒唐無稽と思わせて実は生々しく現実と繋がっているこの作品にはピッタリの演出で、新作カットが単なるファンサービスではない事を強く感じました。編集もかなり大胆に再構成されており、主人公である兄弟の目的がより強調されて、既知の物語でも新鮮さを感じる事ができました。

というわけで、テレビシリーズを観ている者にとってはとても良い作品である事は間違いないかと思います。私個人としては、あの変身バンクが劇場のスクリーンで流れただけでメチャ感動してしまい、涙を流していた位でして…。

ですが一方、初見の方に薦められるかと言われると、ちょっと厳しい、というのが正直な感想です。
理由は2点。どちらもテレビシリーズからの特性の問題なので言ってもしょうがないんですが、まず1点目は幾原監督の演出のアクの強さです。間違いなくこの作品の最大の魅力でもあるんですが、初見では相当戸惑うと思うし、アレはなんだったんだと考えといる内に物語はどんどん展開が重なっていく。ボクらテレビシリーズ組はひとまず30分で一息つけたし、次の話までたっぷり戸惑う時間がもらえてましたが、この劇場版ではそれは叶わないわけで。
次に2点目。物語の構造の問題です。この物語は高倉兄弟が妹を悲しい運命から救うためにピングドラムを手に入れるというストーリーです。今回の劇場版はその点がより明確になるよう演出されており、理解しやすい内容になっているんですが、それはあくまで初見でない場合に限ります。初見の場合、ピングドラムが何なのか、またピングドラムらしいというあのアイテムは劇場版が、を手に入れたら果たしてどういう事が起こせるのかが、この前半の物語では提示されないため、予備知識無しでは途中から主人公達が何を考えているのかが分からなくなり迷子になってしまうのではと感じます。
もし初見の方でこの作品に興味を持っている方がいましたら、観て損の無い作品である事は間違いないですが、鑑賞の前でも後でも良いのでテレビシリーズの鑑賞を個人的にはお勧めします。
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