とらキチ

カルナンのとらキチのレビュー・感想・評価

カルナン(2021年製作の映画)
4.2
第3回インド大映画祭⑥
今回の映画祭のラインナップはオールタミル作品のタミル特集。そんなタミルのスター俳優の1人、ダヌシュの主演作品。ダヌシュと言えば、豪華なセットに計算されたカメラワークのキメキメな群舞シーンだけど、今作ではそれを封印。だが身体の内から湧き出てくるような熱いパッションを表現するような踊りを披露してくれる。
低カーストの所為なのか、世間周囲から抑圧されたコミュニティであるポディヤンクラム村。この村にはバス停すらなく、隣村メールールとの関係も悪くて村人は不便を強いられていた。そんな状況を打開すべく村の青年カルナンが立ち上がるのだが、彼とポディヤンクラム村を待ち受けていた運命とは…。
なかなかにシリアスで壮絶で凄まじい差別を描いた社会派の物語。そのシリアスさはファーストカットから始まり、その緊張感は最後まで続いていく。そしてロバや鷲、蛾、ミミズといった動物や精霊(?)のお面を被った少女といったメタファー表現がとても多かった。
コレ一体いつの時代の話しなんだろう?と思ってしまうほどの村人達の貧しい暮らしぶり。携帯電話とかが出てこないので、そんなに最近ではないだろうけど、警察署とかクルマの様子から察するに、そこまで昔の話しでもなさそう。戦いの準備をする村人達の様子を見ていると、日本史で習う“一揆”ってこんな感じだったんだろうなぁと思わされる。方法論としては、犯罪であるし決して褒められたものではないけれど、隣村、官憲から虐げられ続ける様子があまりにも理不尽で、聞く耳すら持とうとしない相手に対して如何にすればよかったのか…簡単に答えが出るモノでもなく、複雑な心境になってしまう。
そんなズシンと重い内容なので今作ではコメディ要素が一切ない。みんな大好き、我が癒しのヨーギ・バーブの出演シーンですらコメディは無し!しかも彼を待ち受ける過酷な運命に、思わず涙してしまった。
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