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カルナンのkurのレビュー・感想・評価

カルナン(2021年製作の映画)
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いや〜この監督さ、前作から無理やり昇華させようとしてはっちゃけすぎだろ!
見たのはこっちが先で、映画内でカースト転覆革命をどれだけ意図的にやっているか確信が持てなかったが前作「僕の名はパリエルムペルマール」を見るとこの映画が明らかに意図的に映画の力でカースト制度をぶっ壊そうとしていることがよくわかる。
そしてその手段が完全なる暴力である。笑

RRRもそうだがインド映画は「怒り」を映画のエモーショナルの演出に利用することが多い。
その怒りで全てを正当化していくがとりわけこの映画においては「こうしないと変わらない!」という切実な思いみたいなものはすごく伝わるんだよな。
それは監督が被差別階級カースト(ダリット)の出身であるということが何よりの説得力を持たせている。
私の生活圏の社会においては暴力というものはほとんど野蛮なもの、知性から遠く離れたものだが、この社会で暴力が何も変えないかと言えば全くそんなことはなく2022年の7月に起きた元首相の銃殺事件を見れば、未だ物的な暴力の力は何もかもを変えてしまうのだ…と言い切ってしまいたいが、あれを政治的事件と捉えたとき、政治は変わったか?と問われると今のところあんまり変わってないと言わざるを得ないのでまだ暴力が足りないか、暴力に意味はないかどちらかということになる。

どちらにしろ暴力のエネルギーがあまりにも強大であることを私と君らは本能で知っているからこそそれを意図的に遠ざけていることは確かなはずだ。


だがこの映画はそれほどシリアスなものを受け取る前に、絶大な笑いと喜びをもたらしていた。ああこいつら爆笑しながら撮影してるんだろうなあと容易に想像できる訳の分からないコメディカットが挟まれ笑ってはいけないのにドツボにハマってしまったのだった。そのような制作の歓びが垣間見える作品はエネルギーを見る人(少なくとも私には)に与えている。
観た後は清々しい気分だった。
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