【2021年キネマ旬報文化映画ベストテン 第7位】
『ひいくんのあるく町』青柳拓監督がコロナ禍の東京でウーバーイーツで稼ごうと奮闘する自分自身を映した作品。
低予算ゆえの垢抜けなさはあるものの、全体を通して言いようのない不気味さが溢れる怪作になっている。
青柳監督自身のホームレス生活、個人事業主とは名ばかりのウーバーイーツ配達員、「焼野原」になってしまった東京の異様な光景が目に焼き付く。
上手くいっているとは言い難い友人たち、コロナ禍で繰り出される新語の数々などすっかり変わってしまった社会を赤裸々に映し出している。
無理矢理に前向きな言葉でコロナを収めようとする安倍政権、小池都知事が虚しく映っている。別に批判的に撮っているわけではないのにこの白々しさはなんだろう。
9時間走り続けても7000円、そんなウーバーイーツ配達員の現状。今まで気軽に頼んでたけどそんなに安かったんだ。これからはチップつけよう。
終盤おかしくなっているように見えるのだが、元から監督は変わった部分があるんだよなぁ。この監督をどう見るかで評価が変わってくる気がする。
東京を自転車で駆け抜けるだけなのに、そこから現代日本社会の病理、異常さが垣間見える。得体のしれない作品だった。