花火

Blue Island 憂鬱之島の花火のネタバレレビュー・内容・結末

Blue Island 憂鬱之島(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

文革や天安門事件の帰結と今日の香港の現状を伝えるテロップは、同じ画面の中に収まる形で並置され表示される。このように、香港と本土/過去と現在/ドキュメンタリーとフィクションといった対比を示しつつも二項対立的な描写はせずに、むしろ文革期に本土から逃れるため海を渡る水泳→現在の香港で泳ぐ年老いた彼の姿が"泳ぐ"というアクション繋ぎで描かれたり、19年デモの学生代表が天安門事件支持の活動家を演じる場面では彼が演技した後に当時の映像を見返すなど、対立を編集や演技といったこれ以上ない映画的な手法で乗り越えようとする光景が感動的。六七暴動の活動家と香港独立運動の学生が、本来はありえない独房内での対談という形で現実を超越するシーンも素晴らしい。そうした映画の手管によって、過去と現在に共通する中国共産党→権力の暴力性を炙り出す勇敢さ。ナイーブに思われた『乱世備忘 僕らの雨傘運動』の作家は比類なき進化を遂げた(もしかするとそれは"不幸にも"なのかもしれないが)。撮影風景を強調するような画面作り=演出のいかがわしさを正直に/戦略的に取り込むことによって、圧倒的なナラティブを獲得している。
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