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そして、バトンは渡されたの大自然のレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
5.0
物語はCMなのか?と思う始まり方をして、本の表紙のような演出である。わりと、この始まり方の、空に赤字で題名を書くというのがセンスあるなと思ってしまった。

前半のノンキな音楽は、小さいながらも戦ってきたみいたんのあどけなさを助長させる。各登場人物の表面的な紹介があり、その紹介の仕方ですらも、物語を深めていく上で重要なのだと観終わってから知る。

後半にかけての涙腺崩壊がとてつもないが、私は前半あってこその後半。前半の描き方について着目したい。

本屋大賞受賞ということだが、脚本がとても良い。それから、斜めのアングルや主人公の背中をうしろで撮るアングルなどカメラワークもセンスを感じた。撮り方としてもう一つ注目するのが、ファッションだ。『校閲ガール』を思わせる石原さとみさん。お揃いの赤いハートマークのパジャマが可愛らしかった。

もっとも、著名な俳優が出ているから映画を観るのだが、出ているからこそ冷めた感じで、そのストーリーやクオリティには期待せず、俳優を観にいく感覚で行った。平凡な日常にこんなに可愛い人やかっこいい人はいないだろう、と思わないはずはない。

ただ、なぜか俳優らはうまく馴染むのだ。一応、みんながみんなブサイクという設定ではなく、綺麗だからこそ可能なストーリーであったり、それぞれの才能が活かせる役柄であるのも馴染む理由のひとつだろう。岡田健史さんと永野芽郁さんが音楽室で2人で並んで座った時は、こんな美男美女は現実ではありえない、と冷めてしまった。

家族ものに対する弱さをもつ人や、親からの愛情に敏感な人には瞬く間に共感を呼ぶ。みいたんと優子というキャラクターの相関の裏切りを裏切られる感覚、梨花さんという女性の人間性の裏切り、森宮さんという男性の無知という裏切り、裏切りの連続で、一度物語が締まると思いきや、そこからがまた面白かったのが観る人の満足感を高めた。
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