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そして、バトンは渡されたのすみのレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
3.9
タイトルの回収が素晴らしかった。
計り知れない愛情のバトン。優子ちゃんを通じて新しい家族へとしっかり渡されていく、かけがえのないバトン。

親の心子知らずという言葉があって、同時にその逆もある。親の気持ちと子の気持ちはどうしても相容れない時がある。
されたことにたとえ自分が納得できないとしても、相手の気持ち自体は本物で、それを尊重して受け取れる人間でありたいなと改めて思った。

作中で登場する親(特に梨花)が選択してきた行動は、すべてが親として好ましいものではなかったとおもう。
側から見たら理解できないものもあるし、タイミングが違えば優子を傷つけてしまっただろう。
それでも、行動の原理には深い深い愛情があって、優子ちゃんがそれを感じ取れる優しい心を育めたのは、紛れもなく5人の親のおかげでもあるわけで。

与える愛情にも、受け取る愛情にも、育む愛情にも、血のつながりは関係ないのだなと思わせてくれる作品だった。

ひとつだけ引っかかったのは、
梨花が優子に発した、「あなたには選択する権利がある」という言葉。
相手のことを尊重しているけど、10歳にも満たない子供に選択をさせるのは結構酷だなと感じた。選択したら自分に責任が発生するし、自分が決めたことだから泣き言を言えなくなる。
最初の親とのパパとママどっちについていくかと、2番目の親とのピアノをとるか自分をとるか、というのを幼い優子に選ばせるのは少し可哀想だった。
梨花も優子を愛する気持ちや焦りがあったとは思うけど、やり方を間違えたら共依存への入り口みたいになってしまいそう。
とは言え、自立した親子関係には必要なものなのかな。。

あとは、物語の序盤で早瀬くんが言っていた、「血がつながっていない方が相手を尊重できていいな」というのはそんな家庭もたくさんあるよな〜と感じた。血のつながりは時に心強いものだけど同時に呪いにもなってしまうなあと。
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