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草の響きのレクのレビュー・感想・評価

草の響き(2021年製作の映画)
4.1
心の病を患い、医者から運動するように言われた主人公・和雄(東出昌大)はそれから毎日同じ道を走り続ける。

走り続けるか止まるかは自由で、現実を忘れられる時間でもある。
また、自分と向き合う時間や孤独といった意味合いもある。
そして、同じ道を繰り返し走ること、走行距離を伸ばすことで自分の存在を自身に認めさせる役割も担っていると思う。


大好きな映画『そこのみにて光輝く』、『きみの鳥はうたえる』の原作者、佐藤泰志。

『そこのみにて光輝く』のように世界から隔離されたひとりの人間の再生を描く上で、自然風景にその心象風景が溶け込んでいく。
また、印象的に使われた沈みゆく美しい太陽の光が射し込む前者と比べて、本作『草の響き』では函館を舞台に毎日走る景色から土手や夜景などの日常生活にありふれた景色を映し出し、且つ見るときによって異なる景色のように見える。

『きみの鳥はうたえる』のように人と人が織り成す人生の美しさと残酷さ、経過していく時間と変化していく心模様で表現される。
それに加えて、本作では大きく夫婦パートと少年パートの2つに分けられ、後者が持つ空気感は本作のその少年パートと重なる部分も多い。

傑作。
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