しちれゆ

草の響きのしちれゆのレビュー・感想・評価

草の響き(2021年製作の映画)
3.8
東出昌大、どんどん進化している。プライベートはさておき、見栄えの良いだけの役者だったのが、本作では人間の複雑な、一筋縄ではいかない、苦しさとか、弱さとか、その中でもがき続ける、むき出しの生を見せてくれる。彼 和雄と妻 純子 友人 研二 と並行して、いつもツルんでいる高校生たちの何も見つけられない焦燥や何にもなれない葛藤も描かれる。高校生の1人、キンパツが言う「他人の気持ちにさわれやしないよね」。ほんとうに。

和雄は毎日走り続ける。走ることで辛うじて生きている。和雄が走っているとキンパツが並走する。まるで一緒に生きているかのように。それが錯覚だって分かってるくせに。
けど和雄はある日 大量の薬をボリボリ食べる。病院での拘束。回復。柵を乗り越え、靴を脱いで、走り出す。草の響きを足裏に感じて、生の鼓動を聴いたのだろうか。彼が向かう先には微かに希望が見えるような気がする。
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