ツクヨミ

草の響きのツクヨミのレビュー・感想・評価

草の響き(2021年製作の映画)
3.3
心を病んだ僕に残されたものは"走る"ことだった。
統合失調症になってしまい休職中の和雄は運動療法の目的でランニングをする毎日。ある日走っている高校生が一緒についてきて…
精神疾患を患った男を見つめたドラマ作品。今作はまず主人公がスケートボードで町を駆けていくのをぐっと映していくカメラワークから引き込まれた。一切説明もなく移り変わりゆく景色を眺めるオープニングはなかなか美しかった。そして今作は本当に"走る"シーンと移動撮影が多い。それは主人公が運動療法で毎日走っているからなのは間違いないが、走ることでできる人間関係が少し描かれていくのも良いポイントになっている。
また今作は前半で夫婦の物語と高校生の物語が並行して描かれ中盤で徐々に交錯していく流れが実に映画的で良かった。二つの共通点は仲が良い男友達2人とそれに付き添う女性という構成、そして男1人が精神的に何かを抱えていること…後半は二つの物語が交錯しつつ対比的な構造になっている印象も受ける。
そして迎えるラストはオープニングから地続きのものだったのが垣間見えて独特の余韻が残るようだった。
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