Nao

セールスマンのNaoのレビュー・感想・評価

セールスマン(1969年製作の映画)
3.7
1969年制作、アルバート・メイズルスとデヴィッド・メイズルス兄弟による
聖書の訪問販売を行うセールスマンたちに密着したドキュメンタリー映画。

アメリカ中で聖書の訪問販売をする5名くらいのセールスマンに密着しているのですが
あまりにもカメラを意識していないので、
ドキュメンタリーというよりも、その場にいるような感覚になります。
最初は淡々としていて眠いかもと思っていたんですが、彼らが売っているのはかなり高額な商品なのにも関わらず、低所得者層に訪問販売に行っていて、その言葉巧みな営業に見入るようになりました。

子供もいて、日々の生活がキツイ中、
「聖書の価値は下がらない」
「子供は親を見て育つ。一番一緒にいる母が聖書を読む事、そして子供に伝えていくことが必要だ」などと話してその気にさせ、
「支払いは待ちますよ」
「今度の〇〇に、ポールというカトリック新聞にも載った男が回収に来ます」といって
見事に契約させる。
そうかと思えば、「改定版が出た」と言って新たに購入させたり。
ある家庭では旦那さんがビートルズのレコードを買ったと言って、めちゃくちゃ歪んだ音で大音量のYesterdayを嬉しそうにかける中で営業していたり。
本当にドキュメンタリーなのかと思うほど、
ドラマがありました。

どうやってここまで意識させない撮り方ができるんだろうと思うほど、
1台のカメラで、それぞれのセールスマン、購入者をものすごい寄りで撮っていたり、
売り上げが落ち込んだセールスマンが嘆いている横で、話を聞いていた別のセールスマンがあくびしているところを捉えていたり、
でもすごく各カットの切り取り方が良くて
カメラワークが素晴らしい。

ただただ彼らを追っていて凝った編集はしていないのに、欲深さ、傲慢さ、ユーモアさ、、、などめちゃくちゃ人間くさくて面白かった。
Nao

Nao