たむランボー怒りの脱出

殺人魔のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

殺人魔(1965年製作の映画)
4.0
中原昌也への白紙委任状2021にてイ・ヨンミン『殺人魔』。
現在視聴可能な数少ないイ・ヨンミン作品を2本続けて見た。すべてが唐突なところは貸本怪奇漫画に近いが、序盤のタクシーの場面で遠くに写される白い幽霊(?)が複数うごめいているカットに代表されるような、時おり現れる「映画の本質」ともいうべきショットのいくつかに素直な驚きをビシバシと受ける。
後半がごろっとまるごと回想に使われるというバランスの悪さが、いわゆる「洗練」とは程遠く、映画の野蛮な力に溢れていてとても良い。
見ていない人に言葉で説明しても全く伝わらない映画なのだが、見ている人には何となく伝わるのは本当に「理屈抜き」という感じで、映画で何かを伝えるというのは本当は言語とは無縁の領域にあるべき仕事なのだということを改めて感じるために必要な映画。もちろん『恐怖の二重人間』もそういう映画。