casirojetta

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のcasirojettaのレビュー・感想・評価

4.0
面白かった。
キング牧師が暗殺され、ケネディ兄弟も暗殺され、黒人の権利が切実に叫ばれた時代。
ニューヨークのハレムの真ん中で、黒人のために無償で開催された「ブラック・ウッドストック」があった!

これだけでもう、涙が出るというもの。これほどに重要で、黒人たちを勇気づけただろう映像が、今の今まで出てこなかったということ自体が、政治的な問題にほかならない。

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「黒人でありながら、白人のような曲を演奏する」fifth dimention、「ラテンとソウルの融合」を行うプエルトリカンと黒人のグループ、未来の黒人音楽を示したスライ、more and more…というメンツは、そのまま大きな意味を持っただろうと思う。

ブルースファンとしてはB.B.のステージ映像が一曲で終わってしまったのは惜しい。が、少なくとも当時において、「未来」を感じさせる人ではなかったのかもしれない。
かなり攻めてファンキーなドラムを導入したり、誠実な努力は伝わってきたけれど、彼のスタイルとの相性の悪さは感じざるを得なかった(むろん、B.B.は最高!ということは書き添えておく。大好きだし、事実なので)。

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以前観た「ブラック・クランズマン」は、当時のすさまじい差別を描いていた。しかも最後に、それは「往時の」ものなんかじゃなくて、今も本質的には解決されていないんだ、という印象を強烈に残したものだった。

この映画はそれとはまた違う提起をしているなと思った。もっと(いい意味で)素朴なエンパワメントというか。そしてそれは、フェスティバル自体が持っていた要素なんだろう。

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欲を言えば、もっと大きな音で、低音をブリブリに効かせて、グルーヴのうねりや聴衆のどよめきを腹で感じながら観られたら最高だったろうな。
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