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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.7
【忘れ去られた黒人の黒人による黒人のための祭典。】
コロナでライブになかなかいけないこのご時世、映画館でライブ気分を味わいたいなと思っているところに『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』が公開された。本作は1969年に開催された伝説の音楽祭「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメンタリーだ。1969年というと、想定のキャパを大幅にオーバーし、軍隊まで出動しながらもなんとか成功(?)に終わったウッドストック・フェスティバルが有名ですが、同時期に「黒人の、黒人による黒人のための音楽祭」が開催され30万人も動員した。しかしながら、その映像は諸事情により50年間地下室に埋れたままとなっていた。今回はそんな珍しい映像資料を堪能したので感想を書いていきます。

虐げられる黒人が立ち上がった公民権運動。アメリカ社会は黒人と白人の軋轢に関心を持ったかに見えた。「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」は貧困や差別に抵抗する黒人の肖像として30万人の動員に成功する祭典となったが、その映像が放送されることはなかった。テレビ局が関心を示さなかった為だ。どんなに大勢が集まり、凄まじいイベントになったとしても、それがアーカイブされなければやがて風化し忘れ去られてしまう。約50年後、ウッドストック・フェスティバルの壮絶さに興奮した私が気づかなかったように。

本ドキュメンタリーは単なる、発掘した映像を蘇生させるだけに留まらず、巧みな編集によって当時の黒人の「ソウル」をも汲み取っている。公民権運動の様子を音楽のビートとシンクロさせていく。

そして、アポロ11号が月面着陸する瞬間よりも、黒人にとってこの祭典は歴史的瞬間であることを主張する。スーツに押し込められた、黒人アーティスト像が、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやニーナ・シモンのカラフルでクールな衣裳によって羽化する。そして、白人の市長とMCが対話をしたり、バンドの中には白人ドラマーがいたり、男女隔てなくステージでぶちかましている姿は、キング牧師とマルコムXが非暴力か暴力かの狭間で悩み、どのようにして白人と対等な世界を作り上げていくかの結果とも言えよう。
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