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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のSUのレビュー・感想・評価

4.0
観ている最中、意識せずとも不思議と涙が溢れてきてしまった。
それほどに熱のこもった、恐ろしい歌唱力やパフォーマンススキルを魅せつける素晴らしい演奏の数々に釘付けに。そしてフェスが開催された時代の背景と、ミュージシャン達がステージに立った時の心境、志しが明かされ、また観客として観ていた人々には数十年経っても胸に残っている。そんなフェスが浮き彫りにする音楽の力。讃美歌が意味するもの、ワールドミュージックとのハイブリッド音楽で新しい文化が形成されていく様。現状の怒りを音楽にのせて、変化を促すメッセージ性。人類がはつの月面着陸を成功させた頃、貧困層が集うハーレムにはどうでも良い話になっていて、明日の生活の方が心配な状態。その中でハーレムの人々へ明かりを灯すかのようなこのフェスは、人々の心に多くのものを残し、様々な想いが込められた圧巻のステージの数々はどれも胸に迫る熱さがあった。しかし、その熱狂はその場限りで、数十年もの間亡き者とされる。
白人市長との協力を元に無料で開催され、人生に影響をもたらしたフェスがこうして日の目を見たことはとても素晴らしいことではあるが、同時に歴史の闇を浮き彫りにした。この映画に記録された忘れてはならない事実を具現化して後世に残す重要さを改めて感じる。

スティービーワンダーや5thディメンション、スライ&ファミリーストーン、ニーナシモンなど、知ってる曲も知らない曲もそのパフォーマンスの素晴らしさは一貫していて、このフェスを最初から最後まで実際に観て観たかったと思うほど。背負っているものが違う、まさに魂へと訴えかける気迫溢れるステージは今の音楽シーンに薄れつつある熱がしっかりとコンパイルされている。
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