ブラックユーモアホフマン

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.1
ブラックミュージックの血は流れる血管を人種で選ばない。
聞いたら腰を揺らしてしまうDNAは確実に日本人の僕にも流れていた。

ジミー・ファロンの番組のドラマー、というイメージしか僕にはないクエストラブ。すみませんどんな人かそんなによく知らない。監督デビュー作。

ブラック・ウッドストックこと、ハーレム・カルチュラル・フェスティバル。その幻のフェスを写したフィルムが半世紀ぶりに表舞台に姿を現した。

当時その場にいた出演者やオーディエンスの証言を元にどんなフェスだったのかを紐解いていくことは、すなわち69年当時のアフリカンアメリカンたちにとっての文化や政治を説明することと同義なのであった。

勉強になる。特に自分がなるほどと思ったのは、ブラック・ウッドストックの開催されたまさにその日、人類が月面着陸を果たしたのだが、白人たちがそのことに呑気に感動している一方で黒人たちにとっては日々の生活レベルの危機があってそれどころではなかった、むしろそんなことに使う公費があるならハーレムの現状をどうにかしてくれという切実な叫びがあった、という”世間”との温度差について。

またあの天才スティーヴィーにもアーティストとして人並みの悩みがあったのだということとかも面白かった。

カッコよく編集されていて、構成も上手いし、もちろん演奏される音楽はどれも本当に素晴らしい。またアメリカに住む黒人にとっては特別な作品だろうということも分かるのだが、正直ドキュメンタリー映画としての発想は普通かな、とも思う。

社会的背景を説明しなきゃ!という使命感が強すぎて、親切ではあるんだけど、純粋に音楽を楽しむには少し邪魔だなと感じるところも……。

今年のYIDFFで上映された『光の消える前に』もモロッコで長年埋もれていたフィルムが発見されたことから作られたもので、知られざるモロッコカルチャーを世に伝えるドキュメンタリーだった。

【一番好きなシーン】
・序盤、素晴らしいノリで踊るピンクの服の女の子
・デヴィッド・ラフィンが木の上で見てる奴に手を振るところ
・マヘリア・ジャクソンの歌う顔面の強さ