みおこし

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のみおこしのレビュー・感想・評価

3.9
ロックの歴史的祭典ウッドストックが開催されたのと同じ1969年の夏、そこから160キロ離れたニューヨーク・マンハッタンのスラムでも大規模なイベントが開催された。長らく封印されてきたこの「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」の裏側を多くの資料とともに掘り下げる音楽ドキュメンタリー。

1969年のアメリカは、まさに激動の時代。ベトナム戦争の激化、公民権運動の高まり、そして蔓延するドラッグやカルト犯罪…。多くのカルチャーが生まれた背景で、常に闇とも対峙してきたアメリカ。そんな中、音楽もあらゆる点で進化を遂げ、歴史に残るロックの祭典ウッドストックのライブは40万人以上を動員したわけですが、なんと本作で紹介される「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」も30万人以上の観客を動員したのだとか。参加者も錚々たるメンバーで、スティービー・ワンダー、B・B・キング、マヘリア・ジャクソン、ニーナ・シモン、テンプテーションズなど、アフリカ系の超大物アーティストが数多く参加。いずれも目が釘付けになる圧巻のパフォーマンスを見せてくれて、彼らなりのメッセージを歌に載せて私たちに届けてくれます。ブラックレボリューションの過渡期に、音楽の力で世界を変えようと試みたアーティストや関係者たちの並々ならぬ情熱にただただ感服するばかり。素晴らしすぎて、全編つい2回連続で再生してしまいました。
それでもなお、このイベントがずっと日の目を浴びなかったのには、当時まだ根強かった黒人に対する差別の影響もありました。一例として、イベントの実施に当たって警備を依頼したところ、警察はこれを拒否したため、なんとブラックパンサー党が代わりにその役目を担ったのだとか…。しかし、当時のジョン・リンゼイNY市長(白人)が開催に当たって一役を担っていたというエピソードなども紹介されたり、さらに人種・性別が混合したバンドであるスライ&ザ・ファミリー・ストーンの参加もあったりと、画期的な試みをしていた人々も少なからずいたことも再発見。

監督を務めたのは、エミネムやジェイ・Zのプロデューサーとしても知られるアミール・トンプソン、通称クエストラブ(ジミー・ファロンの番組でおなじみのザ・ルーツのメンバーですね)!当時参加していた観客へのインタビューも交えながら、いかにこのイベントの開催が意義あることだったかをつまびらかにしていく構成が見事でした。エンディングのあのお客さんの表情…。神々しいエンタメを生で体感したとき、人はあんな素敵な感情を覚えるんですね。一緒に泣いてしまいました…。
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