Solo1968

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のSolo1968のレビュー・感想・評価

2.6
2021-2022 年越しはテレビなんか見ないで(というか、所有していない)こちらの映画を年またいで鑑賞。
基本的に出演されたアーティストの八割程度は知っているが数組は知らないグループであったり、アーティスト。そして僕自身はいわゆるSoulや本作でもかなりスポットが当たるゴスペルのシンガーのレコードをほとんど買ったことがなくレコ屋勤めの経験で名前や代表的な曲を知っている程度。
はてさて、その程度の浅い知識の自分が観るとどう感じたのか?

○この時代、いや悲しくも現在すら消えていない人種差別問題の受けている側の気持ちをうっすら表面だけその匂いを嗅いだような感じで、当事者であったり、キング牧師の功績などをしっかりと理解していないと、本作のテーマを自身には落とし込めない作品だった。
○様々なアーティストによる演奏がメインであるが、丸々演奏シーンが続くわけでなく、当時この幻のフリーコンサートに観客として参加した人や関係者、出演者の当時の思いをインタビューを織り交ぜながら映し出されているので、二割位知らないアーティストグループの出演シーンも退屈さは感じさせなかった。
○見る前のアートワークやちょっとしたコメントから想像してたものとは違い、ウッドストックと同時期にこんなに凄いアーティストが集まったフェスがあった!
と、僕もこのコンサートの存在すら知らなかったし、これはこれで、好きなアーティストもいるので楽しみにしていたが、本作は単なるコンサート映画ならず、何故このコンサートを開催して四万人を越える黒人の観客が集まり そこでステージに立つアーティスト達は自身の作品から何を聴衆に伝え、心を一つにしようとしていたのか?という事のメッセージ色が濃厚な映画に思えた。
白人による人種差別への批判やメッセージを含んだ映画や歌はすんなりと同調できるのに、何故か本作のような虐げられている側のリアルな魂の叫びであり、魂の解放を声高らかに熱弁熱唱する本作のようなものは、冒頭に書いたその古く長い、愚かでありも深く単純に解決出来ない差別意識の歴史、数知れず歴史を変えようとして声を上げ、立ち上がり 歴史を変えることが出来た人や組織 それに相対する人物組織 事件を本やネットで調べた程度では恐らく本作の舞台となる会場の気持ちは1パーセントも共感する事は出来ないように思えた。
会場には沢山の子ども達も来ており、キャッキャキャッキャと楽しそうにリズムに身体を委ねていたが、その黒人の幼い子ども達と同じ位の感覚でしか僕には楽しめなかった。大人たちが歌やMCで熱弁、熱唱 している事は何となくは分かるけど、。
音楽(歌詞)に特に意味はない という曲は沢山あり、好んで聴いているロックの大半はそんなのだけど、このコンサートに出演して演奏された全ての曲は 観衆の魂を刺激する それこそ決起集会であり、白人社会への宣戦布告決起会とさえ思えた。どれほど肌の色による差別と苦しみがあったのかを文章や限られた映像でしか知らない自分は、この観衆と同じ気持ちに心を高める事は出来なかった。
○若き日のステーヴィーに始まり大好きなBBキングや恐らくハイライトである マヘリアジャクソンとメイヴィスステイプルズと共演やスライのパフォーマンス、どれもとても生々しく、神がかっているし、鮮やかで唯一無二のパフォーマンスだ。けど、演奏に被せるように差し込まれるインタビューや回想シーンは、そこまでして伝えるべき事、すなわちこのコンサートの成した事を間接的にインタビューなどを通じて楽曲に更にメッセージを乗せている演出なのは間違いない。
清志郎のコンサートで楽しむのとは全く違うという事位ははっきりと分かった。


そういえば、、と途中で思っていたタイミングで作中でも取り上げられるアポロ11号のニュースと、それに対する思いのインタビュー。この映画を見るまでは、世界の誰しもが人類が月に行った技術を手放しになって喜んでいたと思っていたのに、少なくともニューヨークハーレムの彼らの中にはそれを肯定していない人々も決して少なくないという事実にも驚き、
少なからずここで描かれている、とはいえノンフィクションなので、世界史の一部をもっと自分は知っておかないと恥ずかしいなと思えた。

それこそ、数えきれない程聞いてきたBBキングのあの曲の歌詞も
もし、彼のコンサートであの曲をプレイしているのをニコニコで、イェーイ👍なんてノリノリでリアクションしてたらなんて恥ずかしいんだろうと、ゾッとした。幸い一度だけ彼の短いステージを体験する機会があったけど、この曲は演奏してなかったので、今更ながらホッとした。

この映画を観て、ネット記事ではなく、書籍でキング牧師について読んで、表面的、部分的でなく、より彼の事を知りたくなった。
Solo1968

Solo1968