ある事件の加害者が被害者の姉と婚約するという、とんでもないシチュエーションでスタートし、終始歯を食いしばって観るような苦しい映画だった。
自己中心的な人間しか出てこない地獄のような物語の中で、最も哀しみと苦しみを抱えた主人公を萩原みのりさんが演じきっている。あの佇まいと目つきの迫力が最大限に活かされていたように思う。監督によれば原作の舞台とは違って寄りのショットを多用したそうだが、個人的には、時折挟まれる引きの絵も印象的で、第三者が現れてこの状況を打破してくれたらいいのにという願いのようにも、また人間の愚かさへの肉薄にも感じられた。
萩原さんが言うように、迎えるエンディングは一見理解し難いけれど、「必ずしも許さなくていい、忘れなくていい」という切実なメッセージがしっかりと伝わってくる。加害者の論理、第三者の論理なんて跳ね除けて、一緒に地獄に落ちる選択も、否定されるべきものではないのかもしれない。だからこそ、安易におすすめするのは難しいけど、この映画を観た人がたくさんいる世の中であってほしい。本当に苦しい人は映画や舞台なんか観ないのかもしれないけど、それでもだ。
