ゆず

かそけきサンカヨウのゆずのレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
3.8
好きな小品。原作読了

母との関係も、普通ならもっと憎しみの率を高くして書きそうなところを、陽は画家である母に対してある種の憧れを持っていたりする。

原作の魅力でもあるが、本作に出てくる大人たちは、「これが正解だ」と決めつけない人たちばかり。お母さんが出て行ったことついて、父が娘に話す場面でも、「あの時はああする(離婚する)のがベストだと思っていたけど、実際、今でも分からない」と、ちゃんと迷っていることを伝えますし、「(大人になっても)できないことだらけ」という、象徴的なセリフも出てくる。

子どもがそれで納得できるかどうかは分からないし、場合によっては子供の方が大人っぽい瞬間もあるけれど、大人たちはみんな迷いながら、子供たちと対等な目線で話をしている。その視線が、優しさや正直さにつながっている。

陽が怒って義理の妹をどんっと突き飛ばすシーンでも、突き飛ばされた方の義理の妹はまだ幼児だし、父の直は直感的にそっちを助けに行ってしまうだろう、それで陽は悲しくなってしまう。最初はそういう流れを想像していた。でも新さんは「いや、でもこのまま直接は(義理の娘の方に)行けないと思うんです」と言ってくれて、陽の方に「おい、どうした⁉︎」と一瞬行ってから、義理の娘の方に向かう。

「こうすると見やすいよね」ということって、「今までの映画はこうなっているよね」ってことでしかなくて、現場で起きるその時の気持ちを優先することの方がこの作品においては大事だったんだなと。
1カメ。

りくもちゃんと言いなよ?冗談にしなくていいから
ゆず

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