いめーじ

屋敷女 ノーカット 完全版のいめーじのネタバレレビュー・内容・結末

屋敷女 ノーカット 完全版(2007年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

外の襲撃者を映すカメラワーク、真っ黒なシルエット、タバコ、窓パンチ…あまりにもカッコイイ。

セルフ気道確保から反撃に転じる瞬間の熱さ、警官のワケわからんゾンビモード、優しい血まみれ分娩介助と帝王切開…あまりにもカオスで地獄。
1人が誕生する間に何人も死んでいくのが何らかの皮肉っぽい。

鋭利で長い得物を使って妊婦にだろうが容赦なく暴力が訪れ、猫も死ぬ。
もはや芸術的というよりもアトラクション的なゴア屋敷状態で、あまりにも痛々しい。
どんなグロよりも、妊婦がダメージ受けて下からドバーと溢れるのが一番しんどいな。

イカレ女は圧倒的にクレイジーだったけど、彼女以外の登場人物は赤ちゃんに対する関心が薄い奴らばかり揃っていて、「お前はここまで子供を思いやれるのか!?」みたいな、イカレ女寄りの対比構造がムリヤリ作られていた気がする。
独特だった赤ちゃん視点は途中から無くなって、映画自体も「死」に夢中になる始末。
舞台のフランスもデモ的な暴動で騒がしいし、クリスマスの設定も物語的に意味をなしてない。

事故った時の旦那は妊婦の妻に運転させていたし、隣でタバコを吸う看護師や失礼な警官もアレだし、主人公ですら子供を楽しみにしているようには見えなくて、1人になりたいからと入院や周りの手も借りようとせずにリスクを高めてる。
よく聞いてみると、序盤の母親とか上司との会話って赤ちゃんについて何も触れてないし、出産を迎えるとは思ってないかのように予定を立ててる。
終盤で突然ジャーナリスト魂を燃やして死体を撮りまくるのも異常。
自分の腹に凶器を向けてイカレ女を脅した瞬間に主人公の立場/役割が逆転した感ある。
もちろん、自分の欲のために母体からムリヤリ取り出そうとするイカレ女が一番危険なのだけど、ただの殺人鬼で片付けるには惜しい複雑な背景も感じてしまう。
「誰にも渡さない」と言いながら1人で運転していたり、わざわざ復讐に走ったことからして、彼女は独身だった可能性が高く、主人公の上司の股間を突き刺したり執拗に痛めつけるシーンからは男への憎悪を感じなくもない。
復讐設定が明かされてから序盤のタバコのシーンを思い返すとカッコよくキマりすぎていて変に笑える。
事故の時からずっと死んでいたイカレ女は赤ちゃんを手に入れて生まれ変わったワケか。

イカレ女の戦闘力と隠密スキルとか、警官が主人公を部屋で待たせてブレーカーを優先した流れや、唐突なゾンビ化は普通にツッコミ所だと思う。でも地獄だから何が起こっても仕方ないんだ。
運転に気をつけなきゃ…

本当にキツイけど傑作!