MasaichiYaguchi

土手と夫婦と幽霊のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

土手と夫婦と幽霊(2018年製作の映画)
3.7
「狐につままれる」という言葉があるが、映画の冒頭から暫くして主人公の自称小説家の男同様に我々観客も「あなたは誰、どうしてここにいるの、何がしたいの、そもそも私は誰?」という状況に陥る。
上映時間59分という中編の本作だが幾つかの章に分かれていて、そこで不条理というか、不可解な男女のドラマが展開される。
本作における、男が転がり込んだ土手沿いに暮らす女の家での幾つかの謎、出される「不味い食事」、提供される「ぬるい風呂」、そして唯一固有名詞を持つ「高橋」の存在。
これらが一体何を意味するのか分からないまま、各章は進んでいく。
そして終盤に入った或る瞬間に、恰もネガがポジになるかの如く、見えていた景色がひっくり返り、謎が瓦解する。
そこで初めてタイトルが意味するもの、その真意が分かる。
この作品は男女の繋がりとしての夫婦というものを、全く別のアングルから覗き込んでいるような気がする。