社会のダストダス

ベネデッタの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.2
聖と生と性。17世紀に同性愛の罪で告発された修道女の実話から着想を得たという作品。

風の噂で聞いたエッチな映画『ベネデッタ』を鑑賞して参りました。完全にスケベホイホイされて観にきたことがバレないように厳つい表情で座っていたが、2022年は思いのほかエッチな映画を観ることが多かったので、十分に修行を積んだと自負している。おかげで、画面内でどんな破廉恥な行為が展開されていても、目が泳ぐこともなく両腕を組みどっしりと構えて観ることが出来た。2023年の私はもはや煩悩に惑わされることなどない!

幼いころに聖母マリアと話し奇跡を起こす少女とされ修道院で育ったベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)は、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメア(ダフネ・パタキア)を助ける。聖痕を受けイエスの言葉を代弁するように振舞う傍らで、バルトロメアと秘密の関係を深めていくベネデッタに対して、修道院長(シャーロット・ランプリング)は疑念を抱いていく的な話。

去年観た変態映画オブ・ザ・イヤー『Titan/チタン』と同等か、あるいはそれ以上の変態成分を含んでいる。17世紀に実在した人物を題材にしていて、結構真面目な信仰に関しての話でありながら、上手く表せないが映画的な魔力に溢れた作品だった。

ベネデッタの夢に出てくるイエス様が乙女フィルターを通したみたいにイケメン。そして途中でイエス様を偽って出てきたハゲのおっさんに対して罵詈雑言のメチャクチャ当たりがきついのが可哀想だった。このおっさん冒頭でハトの糞も喰らっていたので、その後幸せな人生を送れたことを願ってやまない。

修道女といえば布地に覆われているイメージだが、本作の主演二人は全裸の時間のほうが長いのではないかというスーパー露出狂映画だった。時はまさにペストの時代だが、バストが大半を占める。聖像を挿入して悦びの声を上げているシーンとか、気まずさよりもインパクトが超越しているから凄い、自宅のリビングとかでは絶対観る勇気がないので劇場で観て良かったと思えるシーンである。「トゲがある…」じゃないですよ。

イエス様が憑依したかのようにベネデッタがたびたび低音の男の声で話し始めるところは、神様というよりは悪魔が乗り移ったように見えるので、エクソシストを呼んできた方がいいと感じるくらい真に迫るものがある。神の天罰と疫病の流行、目に見えないものへの恐怖によって人心を掌握していくベネデッタと、長年修道院に務めながら実のところ神の存在を信じていないシャーロット・ランプリング演じる修道院長の対比も面白かった。

後半に出てくる拷問器具が最近観た『あのこと』で手術に使われている道具にそっくりだったので、あれって拷問器具だったの!?という驚きがあり、どうりで痛そうだったわけだと納得した。この際の役者さんの叫び声がまた尋常じゃないくらい凄いので夢に出てきそう。

大変けしからん映画だったけど面白かったです。ポール・ヴァーホーヴェン監督は80を過ぎている方なのか。私の寿命を1年くらいなら分けてあげるので、これからもこんな尖った映画を撮り続けて欲しい。