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こちらあみ子のYKのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.0
主人公のあみ子は、元気で好奇心旺盛で誰とでも話せる女の子。だが、映画を観ればわかる通り、世間ではこの子を「変わった子」とも呼ぶ。学校では靴を履かないし、クッキーはチョコレートの部分だけ食べるし、妄想癖も強い。誕生日には、お父さんから「トランシーバー」をプレゼントされて大喜びした。そんなあみ子の様子を、観客たちはローアングルなあみ子目線のカメラで観ることになる。しかし、観る人が感情移入するのはあみ子だろうか・・・?お父さん?お母さん?お兄ちゃん?同級生のノリくん?坊主くん?自分がどの視点に立つかによって、物語はどんどん立体的になっていくだろう。

ネタバレ回避のため内容はこのへんにしておいて、なぜ自分はこの映画が好きなのかを考えたところ、その1つが撮影であることに気づいた。撮影の岩永洋は、『愛がなんだ』や『街の上で』など今泉監督の映画によく参加している。今泉ファンの自分にとっては、けっこう納得がいく事実だった。撮影の知識がないのでどこがいいとは言えないが、派手でもなく地味でもなく、空気感があってすっと入っていけるような感じ。また、長回しや固定カメラが多いというのも、個人的にはけっこう好きなポイントだ(これは監督の演出かもしれないが)。長回しで言えば、保健室であみ子とノリくんが2人きりになっているシーンが印象的だった。監督は大沢一菜に対して、心の中で○秒数えてから次のセリフ、というような演技指導をしていたらしいが、あんなに長いカットを新人の子にやらせるなんて鬼だな!と思った。でも本番映像はどれも間が絶妙で、監督もあみ子もすごい。そのほか音響などもけっこう特徴的なので、五感に響くこの映画はぜひ劇場で観てほしい。
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