サスペンスに仮託して、映画の面白さをいいとこ取りしたような作品だった。
伏線たっぷりな重厚ミステリーに見せかけて、それをフリにした天丼的ボケをかましてくるコメディでもある。
テック企業の栄華を斜に見る、影響力の時代を風刺する社会派映画とも取れる一方、力業で魅せるアクション映画的側面もある。
緊張感のあるシーンでチリソースがゆっくり鼻に流れ込むカットとか、「この建物は禁煙です」が綺麗に回収される展開とか、普通のミステリー作品ではあまり見られないおもしろ手法がたっぷりで、最後まで飽きずに観られた。
ベースとなるミステリー部分ももちろん納得感のあるものだが、それ以上の多層的な面白さが詰まった映画なので、ミステリー好きだけでなく万人にお勧めしたい映画だった。
