ひでぞう

夢の涯てまでも  ディレクターズカット版のひでぞうのレビュー・感想・評価

3.3
まず、前半部、これはコメディだ。クレアを中心に、敵も味方もごっちゃになって、みなその周りで仲良くなる(クレアと愉快な仲間たち)。辻褄があわなくとも、コメディなのだから目くじらを立てることはない。ただ、中心となるクレアが、ミューズとしての魅力が感じられない(これは決定的だ!)。それでも、空の青さといい、荒涼とする茶褐色の地平、空気が感じられるような空間の拡がり、ハッとするような美しいシーンを見ることはできる。中盤から、SFの色彩が強くなる。何より、ジャンヌ・モローの迫力(タバコの吸い方といったら、ファム・ファタールのままだ…)、笠智衆の好々爺ぶり。ヴェンダースのリスペクトしてきたものもわかる。そして、最後はクレアの破壊と再生の物語へとなだれ込む。異なる3つの物語を一つの作品にしたように思える。しかし、やはり、これは、冗長だ(ディレクターズカット版:4 時間 47 分)。「世界の終わり」に、音楽の意味が明瞭に示されたこと、そして、言葉による想像力を極限まで拡張することで映像をこえることができるのかということ、これらが浮かび上がってくるにしても…。
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