Yui

前科者のYuiのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
4.1
罪を犯した“前科者”たちの更生・社会復帰を助ける非常勤の国家公務員である保護司、阿川佳代の姿を描いた作品。WOWOWドラマ『前科者』30分×6と観やすいので、断然そちらを観てからの鑑賞をおすすめします。ドラマの2年後を描いた物語。

ドラマから二年後という事で、有村架純演じる佳代が少し強くなっていて、空白の二年も更生を目指す人達の手助けを実直に続けて来たんだろうなという印象を受けた。

『ヒメアノ~ル』の森田剛がとても好きで、森田剛の映画を心待ちにしていたんだけど、工藤という複雑な過去を抱えた男を自然に演じていて、こちらも好演でした。影というか、哀愁を感じる森田剛の役がとても好き。悲しくてたまらない気持ちにさせられる。『ヒメアノ~ル』もそうだったけど、演じているというより、こういう人なのでは?と思わせる森田剛、やっぱり上手いんじゃないかと思うんだけど、今後も映画の森田剛が観たい。期待してます。

元受刑者が更生して生き直す事はとても難しい事だと思う。世間に白い目で見られたり、過去に足を引っ張られたり、自分で足枷を付けてしまったり…それに加えて、仕事や家が見付からなかったりしてしまえば、どうやって生きたらいいのか分からず、自己嫌悪に陥ってしまうだろう。そんな時に保護司や国の助けは必要不可欠で、事務的な事だけではなく、そこに心があれば更生に一歩近付けるのかもしれない。

人それぞれ、生い立ちも犯した罪も何もかも違うから難しいかもしれないけど、心に冷たい風が吹くばかりの人生ではきっと人は生きていけない。人の温かさに助けられる時、生きている事を実感するし、生きている事を肯定される気がする。元受刑者じゃなくても、誰かに助けられて生きて、生かされてるなって思う。

重厚なサスペンスストーリーとなっている本作を観ながら、色んな感情を揺さぶられ、色んな事を考えた。綺麗事も必要だけど、綺麗事ばかりではなく、込められたメッセージも強くて重い。

後半はとにかく涙なしでは観れなかった。
選ぶことは出来ないんだけど、家庭環境ってやっぱり物凄く大切で、そこが選べないからこそ福祉や国として変えて行くこと、そして人の愛、思いやりがもっと大切になってくるなと。難しいのかなぁ。

ドラマ版でもそうだったけど、コンビニの店長さんの存在がこの作品の大きな素晴らしさの一つだなと映画版でもまた思った。コンビニの店長としては困る事がたくさんあるのに、保護司としての佳代を陰ながら応援する事で、誰かの幸せへの一歩の手助けをしている。
こういう作品を観ると「自分には何が出来るかな」と考えるけど、保護司にはなれなくても、自分のプラスにはならなくても、どこかで誰かの明日になるような行いは、私にも出来るような気にさせてくれる。そんな風に身近に感じさせてくれる彼の存在は大きいなと思った。

有村架純は好きなんだけど、正直唸るほど上手いと思った事はないのでちょっと残念な部分もあったし、説明しすぎと感じるセリフやツッコミどころも少しあり、気にはなったけど、それよりも、作品のベースとメッセージがしっかりしているし、磯村勇斗、マキタスポーツ、北村有起哉、宇野祥平、リリーフランキー、木村多江と脇もしっかりしているのでとても見応えがありました。
そしてやっぱり若葉達也!上手い。ぐっと持っていかれるシーンが何度もあったな~。

考えさせられる事の多い作品だったけど、こういう作品は必要だし、もっと観たいと思いました。良作です。



2022-53
Yui

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