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前科者のしのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
4.4
重い。面白い。。


ドラマでは一貫して犯罪加害者と世間について描かれていたけど、映画ではそれに加えて佳代がなぜ保護しになったのかについても描かれていた。

 ドラマでもそうだったけど、緑の台詞がポイントポイントで効いてくる。「私らみたいな人間以外にもこんなに弱い人間っているんだ。弱さを見せてくれるだけでも安心できるんだよ。」「裁判官や検察官とかの強い人間達が世間を代表したかのように更生しろとプレッシャーをかけてくる。」一つ目の台詞も二つ目の台詞もドラマであった「前科者は世間が怖い」と繋がってくるのかなと思った。前科者はやってしまったことを悔いてはいるもののそれを取り消すことはできない。その過去からなかなか抜け出せず、自分は辛いなどの弱音を吐いていてはいけないのではないかと苦しみ悩む。これに苦しみ、以前の居場所である犯罪の温床となるようなところに居座り、再び犯罪を犯してしまう。でも、佳代のような弱さを見せながらも寄り添ってくれる人間がいて弱音を吐きながらも、新たな人間として更生して生きてほしいなと感じました。
 又、この世間が加害者に向ける目というのがマキタスポーツさん役の警察官や誠の弟の実の「お母さん殺したのに普通に生きてるよ。お母さん殺したのに笑って生きてるよ。」という台詞からも実感できた。
 でも、辛い目を向けられる世間の中でどんな残酷残忍な加害者でも更生の機会というのは与えられて然るべきであるし、佳代の言うように被害者のみならず加害者を生み出してはいけないと思います。これは佳代が保護司を目指した要因にもなったんだろうなとも思いました。だからこそ、佳代が虐待の件を通じて被害者遺族の立場に立てたことはすごく大事な経験だなと思いました。


 加えて、今回の誠の台詞で「あんなに小さかったんだ」あったように虐待を受けた子供にとってその親というのは世界の全てみたいなもの(村上龍『ワイン一杯だけの真実』から引用)で、それに暴力を振るわれるのがどれほど怖いことなのか少し知れた気がします。
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