地底獣国

理大囲城の地底獣国のレビュー・感想・評価

理大囲城(2020年製作の映画)
4.1
逃亡犯条例改正反対に端を発した2019年の民主化運動「時代革命」、その闘争(と敗北)を象徴する香港理工大学紛争を大学構内から記録したドキュメンタリー。目にした物のインパクトに己の表現力が全く追いつかないので今回はほぼ紹介のみとなります(1/3追記:事の顛末を記していますが、とにかく本作がどういう映画なのか紹介する、という事を優先したかったのでネタバレ警告マークを外しました)。

最初に本作の情報を入れた時は「安田講堂の攻防みたいな感じ?」とか思ってましたが、事情は異なるようで。

(例によってWikipedia情報なんで事実と異なるところがあるかもしれませんが)条例改正案は撤回されたもののその他の要求は通らず、状況が不利になる中11月13日から民主化運動のデモ隊は理工大前の紅磡海底トンネルを封鎖し交通ストライキを行います。警察がこれを排除にかかり、デモ隊側は投石と火炎瓶で対抗するも後退を余儀なくされ、理工大のキャンパス内に追い込まれ封鎖されてしまったというわけです。

統一されたリーダーシップを持たない体勢が裏目になり場当たり的に包囲を突破しようと試み失敗を繰り返し消耗していくデモ隊(唯一効果を上げた高速道の場面は観ているこちらもちょっとテンション上がりました)。焦燥感と疲労が蓄積し、内部分裂を起こしていくという、いつか何処かでもあった居た堪れなくなる光景。

頼みの綱であった外部の支援者たちによる救出計画も頓挫したことから投降する者が増加、11月29日封鎖は解かれ大学の内外で1377名の逮捕者を出して理工大紛争は終結となりました。

当局にとってこの映画は「犯罪者側からの視点」であり、やはりというか三級片指定を受けさらに中央政府支持のメディアからバッシングを受け、結局劇場も上映中止を決定。ついでに言えば制作者が検閲機関に提出した本作のDVDは「従業員の不注意により」割れた状態で返却されたそうです。

最後に私見を述べますと、2019年より今の方が締め付けは強くなっており香港の状況はかなり悲観的だとは思います。しかしこういった形で記録が残され、一本の映画として公開まで漕ぎつけたのですからまだ口は塞がっていません。「弾ァまだ残っとる」と信じたい。
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