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裁かるゝジャンヌのヨウのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.7
「俺は今、とんでもないものを観ている…!」そんな高揚感が身体から抜け切ることがない。”画”を”映す”。読んで字の如く、”映画”とは何たるかを身をもって思い知らされた。説明の余地を排したテイスト、厳かな音響、鬼気迫る各人の顔。これ以上の映画は存在しない。究極の総合芸術。

フランスの永遠の英雄・ジャンヌダルクに纏わる物語。前代未聞の裁判に隠されたエピソードとは… 裁く者の嘲笑、裁かれる者の屈強さ。それは神の啓示なのか、悪魔の囁きなのか。拮抗し合う主張。同情の差し伸べなんて必要ない。私だけが恩寵に包まれているのだ。涙の内に秘められた信仰心が胸を打つ。

どんなに辱められても決して折れない雄々しい女性の生き姿。たとえ煉獄の炎に包まれようともその強靭な霊魂まで焼き尽くすことができようか。最期まで貫かれた信念はとこしえに渡って人類を正の方向へ突き動かす。凄まじいパワーだ。カールテオドアドライヤーが映画の至宝と讃えられる所以はここにある。

何はともあれ”画”のエネルギーが強烈すぎて… 絶望と希望、表裏一体な表情の妙に終始釘付け。特に終盤の火炙りのシークエンスは圧巻という言葉以外見つからない。こんなにもスクリーンを眼球いっぱいに見開いたのはいつ以来だろうか。観る者全てを圧倒的な没入に誘う途轍もない空間創り。これにて映画は終わる。超えるものなど現れるはずがない。映画人よ、ここに学べ!
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