とうがらし

東京クルドのとうがらしのレビュー・感想・評価

東京クルド(2021年製作の映画)
3.7
昨年、鑑賞。
レビューし忘れにつき、鑑賞メモを記載する。


故郷に帰らない被災者と、国に帰らない難民の子が出会う。
2人は交流を通じて、「帰らない」が「帰れない」であることを知り、「その先の一歩」を踏み出そうとする話。

8歳の頃、トルコから日本にやってきたラマザン。
ラマザンの父は、トルコでゲリラ活動をしていたクルド人の武器輸送を手伝っていた。
友人が殺され、命の危険を感じて、国外へ。
はじめはドイツへの難民を希望していたが認められず、家族で日本に来た。
冒頭、トルコ大使館で在外選挙。
トルコ人とクルド人の対立が起こっていた。

入管の収容2年半の期間を経て、仮放免許可証を持って日本で生活している。
ラマザンは、小中高と日本の学校を通って、解体業の仕事をしているが、仮放免中の仕事は認められておらず、いつ捕まるかも分からない状況にいる。
彼は、クルド語とトルコ語と日本語を話せて、通訳や翻訳の仕事を夢見て、英語を勉強したいと思っていたが、入学を認めてくれる大学は見つからない。
学校に入ることの大変さを実感。
モデル登録をしてみるも仕事ができなかった。
紆余曲折を経て、自動車学校に入学が叶う。
しかし、難民認定されず、就業ビザも取得できず、この先どうなるか分からない…。
将来が見えない、生きてて辛い、自分には価値がない…と思い悩む。
裁判で就業ビザを取得できるようになったが、ラマザンと弟のみ。
両親や日本で生まれた妹は認められていない。
教育、医療、住まい、生活に必要なちょっとしたことでも、壁があって乗り越えるのが大変。

入管は知らない、分からないものは関わらない、想定していないものは拒絶。
日本人の民族性や無宗教性が表出する。
見えない鎖国(難民鎖国)が存在する。

仮放免の未成年は300人ほど。
県外へ出るには、入管で一時許可証が必要になる。
仮放免は、家族や病気などの理由で、収容所に居なくて良い許可であって、日本に居て良い許可ではない。
父は、牛久の収容所正面から出るのが許されず、脇の玄関からこっそり出てきた。
その風景を見たラマザン。
1~2ヶ月に1回、入管と面談して、仮放免の延長を許可されているが、いつ認められず、収容されるかも分からない。

社会福祉士とソーシャルワーカーの間で、法律や制度上に該当しない人には手助けできないという矛盾に苛まれる。
保険が適用できない患者に対して、病院は150~300%範囲で請求される。
高額請求も違法ではない。
他者が決定する(民主主義の存在しない)領域で苦しんでいる。
未成年の子は、大きく成長すると、仮放免の状況が重くのしかかって、悩みが大きくなる。
収容可能な年齢になったら収容される可能性が出てくる。
裁判で両親が強制送還になる可能性が出てくる恐怖もある。
国が推進するSDGsや多文化共生プランは、難民は対象として考えられていない。

高齢化社会になって、人手が減り、技能実習制度(EPA)に舵を切る日本。
やる人がない仕事につかせる奴隷に近い制度。
一度決まった仕事は嫌でも変えられない。
人権侵害の温床になっている。

入管職員は帰国の説得が仕事。
入管法=外国人に対する、日本人の意識・マインドが凝縮されている法律。
外国人を救いたくて、弁護士を目指したが救えず、苦しむ入管職員の人も居る。

問題を取り組む団体はそれぞれある。
が、お互いに共通する点をきっかけに領域を越境しないと改革につながらないのかもしれない。

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=_k_9NgbzGTQ
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