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梅切らぬバカのKUBOのレビュー・感想・評価

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)
3.8
今日は、加賀まりこさん主演『梅切らぬバカ』を舞台挨拶付き東京新聞特別試写会にて鑑賞。

加賀まりこさんの役どころは、50歳になった自閉症児の息子「ちゅーさん」を抱えるお母さん。2人だけの生活に、このまま自分が倒れたら「このまま共倒れになっちゃうのかね?」と、ちゅーさんをグループホームに入れることにするが…。

54年ぶりに主演を務める加賀まりこさんは、現在のパートナーのお子さんが自閉症児ということもあり本作への出演を決められたそうで、舞台挨拶でのゴージャスな「加賀まりこ」さんとは180度違う「割烹着が似合う」お母さんを演じた。

特筆すべきは「塚地が上手い!」。本作は、ちゅーさんがかわいくなければ作品として成り立たないのだが、50歳、自閉症児のちゅーさんを熱演して本当に「かわいい!」。

自閉症を演じるというのは、そこに作為が見えたらおしまいなんだけど、塚地マジで上手いんだ! 日本人なら「ドランクドラゴン」の塚地がやっているとすぐわかるけど、わかってても自閉症児の「ちゅーさん」にしか見えないし、普通にちゅーさんが好きになっちゃう。もし外国で上映したらお笑い芸人が演じているなんて絶対信じてもらえないだろう。

撮影中は塚地はちゅーさんに成り切っていたので、加賀まりこさんとは一切世間話もしなかったと舞台挨拶で加賀まりこはおっしゃっていたが、塚地武雅のこの演技はまさに熱演! 自閉症児は基本的に目を合わせないから、塚地とも最初から最後まで目を合わせない芝居だったそうだ。

自閉症児を抱える家庭の問題、グループホームと地域の問題、リアルなテーマを訴えてなお、心温まる母子の物語。

舞台挨拶の最後に加賀まりこさんは、「街でちゅーさんみたいな人を見かけたら、特に何かをしてあげなくてもいいから、微笑んであげてください」と呼びかけた。

塚地の名演と割烹着姿の加賀まりこ、気になった方は、ぜひ。



*この映画を見て思い出したのだが、息子が小学生の頃、ご近所に知的障害のお兄さんがいた。息子は「あの人、睨んでくるんだ」というので、いっしょに歩いていてばったり会った時に私の方から「こんにちは」と話しかけ、おうむ返しに「こんにちは」。「お名前は?」と聞いても「お名前は」とまたおうむ返しに帰ってきたから「KUBO です。君のお名前は?」と返すと、やっと「◯◯です」とコミュニケーションになった。息子も少し安心した。身体は大きくなっても心は幼児のままだったりすることはなかなか理解されないだろうけど、本作のような作品を通して理解が広まればいいですね。
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