難しいよな。
うん、難しいよ。
母親の葛藤がこれまでもこれからもずーっと続く。
「梅切らぬバカ」「入る入る詐欺してるわけじゃないんですよ」だったかな
「した方がいいこと」と「しない方がいいこと」の両面を抱えている忠さんの母親の葛藤が終始描かれている。
世間は思いの外ある一面しか見ていなくて
何かをすれば別のところで軋轢が生まれることが分かる人は特有のジレンマを抱えることになる。
だから人に優しくしましょう、という話なんだけど、人に優しくすることが自分にとって不利益を生じさせることが予測される中で、なぜ人に優しくしなければならないのかと考える人も少なくない。
ある面、とりわけ自分にとって都合のいい解釈ができる面しか見れていないと、優しさと自己犠牲がイコールで結ばれてしまいかねない。
占い師という職業や乗馬クラブの人をなだめる場面からも、守るものと犠牲にするものをその人単位で考えつつ、その人たちが集まった場では個人間のバランスを取り持つこともできる。
ただ優しいのではなく、つまり優しさと自己犠牲を混在させることなく、「あなたを理解している」という立場で人と接する。
優しさと自己犠牲を混在しかけている人に対して、混在しかけている部分を灰汁のように掬い上げる。
優しさと表裏一体なのは自己犠牲ではなく他者理解であるということを、忠さんの母親を通して学びとることができる。
そして、それがなんだと言わんばかりに、何かが変わったり何も変わらなかったりするいつもの日々が続く。
だから難しい。
他者への理解を示したところで、何かが劇的に変わるわけではないのだから。
変わったことに気づかないこともあるのだから。
そして葛藤は続く。
ただ葛藤が、続く。