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クレイヴン・ザ・ハンターの史のレビュー・感想・評価

クレイヴン・ザ・ハンター(2024年製作の映画)
4.0
IMAX字幕

家父長制やらプライドやら守るべきもの(と誤信しているあれそれ)に縛られた生きづらそうな男たちの話で最高だった。
多様な男たちが出てくるのに、みんな異性愛描写がないからか(それだけじゃないが)クィアネスを感じてそれも良かった。

やっぱりSSUは、関係性ものを描かせたら外さない。

とはいえ、テンポ感は悪めではあったし、CGとかアクションとかは少し残念に思うところもあったし、一本の映画にしては矢印がたくさん飛んでいるし「これでSSU終わらせる気なの?!」という気持ちは残るが、トータルすると予想していた期待値は超えてきた。

以下ネタバレ
「一番悪いのはそりゃパパだけど、そのままの接し方してたらディミトリくん闇落ちしちゃうよ?!?!ねぇ!」って思いながら見ていたら、思っていた通りの闇落ちの仕方をしていて「だから言ったよねセルゲイくん!!!」となっていた。

家父長制バリバリの価値観の中で育てられて、そこに適合する性格と強さを手に入れたのにもかかわらず、そこを抜け出し、弟を置いていく。それでも尚、ディミトリと関係性を持ち続け、「パパの求める息子像にはなれない自分」の現実と「なれるのにならない兄」の姿を見せつけさせられ続けたら、そりゃ嫉妬や劣等感でおかしくもなる。誘拐やそれに伴う仕事道具の指の切断はキッカケに過ぎなくて、いずれ爆発していた。
終いには、最初の狩りと同じ状況で、自分を誘拐したヤツを確実にヤレるとなっているのに「お前の役目じゃない」と言って逃げてばっかりのピアノプレイヤーから変われるかもしれない機会すら奪うもんだから、そりゃまあ闇落ちして、兄すら敵扱いしてしまうのも仕方ない。
セルゲイはディミトリを家父長制の呪いから解き放ってあげるべきだったのに、自分だけそこから逃げて、家父長制のカーストの中じゃ下に位置する「守るべき存在」に弟を置いたまま。パパを殺したって、これがそのままなら、こうなる。

最後のディミトリの意見がなかなか新鮮で、こういうヴィラン属性とかダークヒーロー的なキャラクターって「悪いことはしていても芯が通っている(自分のルールから外れない)から好き」みたいな評価をされることが多いが、それを「order?code?だから何?」「結局、父と同じだ」と一蹴するのカッコよかったな。

動物を狩ることに対する価値観とかからパパに「昔のイギリスかよ」とか思っていたら案の定最後に「帝国」と自ら言っていて笑った。
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