陣内栄

クレイヴン・ザ・ハンターの陣内栄のレビュー・感想・評価

クレイヴン・ザ・ハンター(2024年製作の映画)
4.8
アーロンの鍛え上げられた肉体美を堪能できた。あの身体を拝むためにもう一度観たい。短期間での増量と肉体改造。俳優さんたちの命懸けの役作りには尊敬と感動しかない。この作品の非現実的でありながら、スタントの無理のなさはアーロンの役作りの賜物だろう。

長男で跡取り、後のクレイヴンとなるセルゲイ。母違いの弟であり、父からみくびられているディミトリ。そして極悪マフィアの父親。3人の軋轢を描いている昨日だった。父親の毒親っぷりがなぜかカリスマ性もあって、ああいう誰にも好き勝手に喋らせない人は上に立てるのかもしれない、と思わせるほどだった。

主人公のセルゲイは申し分なくカッコよくてワイルドで、残酷さも金揃えたブラックヒーローだった。アーロンがハマり役で、ちょっとした表情や動作が、セルゲイのぶっきらぼうでありながら母を愛し自然を愛する不器用さを表現していた。

一方で、この作品でなぜか肩入れをしたくなったのは弟のディミトリだった。家族の中でも仕事上でも立場は「弱者」にあたるディミトリ。彼は自分の弱さを認め悩みながらも周囲を立てるところも優しい人柄であった。セルゲイとの関係も良好で、なんだか守ってあげたくなる人として表現されていた。しかし、彼の"弱さ"は父から憎まれ、兄からは愛される対極的な捉え方をされていた。ラストにかけて周囲からの評価に翻弄され、アイデンティティを揺さぶらてしまう。セルゲイから「お前はやらなくていい」「そのままでいい」とありのままを認められても、その言葉を信じることができなくなる。それは、セルゲイが弱いディミトリのことが好きだったからなのか??たとえ強いディミトリでも愛してくれたのか??
そんないろんな感情をグルグル持ちながらラストシーンまで見てしまった。これが映画の面白さ。またたくさんの人の考察を見てみたい。
陣内栄

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