若色

英雄の証明の若色のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
3.7
白か黒かをはっきりさせたがるこの社会では、9割の真実があっても一握りの嘘があるだけで、全部を嘘だとしたくなる、ある意味でっちあげたくなる集団心理が働く。

白のみの人間は生まれてすぐの赤ん坊くらい。でもお乳が飲みたいと泣いた時点で、そこに悪意のあるなしではなく、周りからの尺度でわずかな黒が足される。

そこに本人の意思はなく、あるのは周りからの判断のみある。

やたら出てくる階段のシーンは、首吊り台への歩みのようにも見える。
螺旋状の階段は、上から見ると同じところをグルグル回るたわいもない営みのよう。神からの目線だと、人間なんてこんな風に狭くて同じところを巡っているだけの滑稽な生き物に見えるのかもしれない。

誠実に生きようとしたのに、残酷に扱われ、ドラマチックに祭り上げられた末路は、暗い場所へ戻らせられる。
観客は明らかな答えを知っているように監督は作り上げた。核心部分をグレーにする演出にもできたが、監督はそれをやらない。
だからその理不尽な結末に観客は、乾いた喉に生唾を呑み込む。苦しい。

最後のシーンのコントラストは見事で、画面の半分は光、画面の半分は闇。
主人公が向かうのは、残念ながら闇であった。
若色

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