甘い話には...
恋人が拾った金貨を、元妻の父への借金の返済に当てようとするも思いとどまった服役中の男ラヒムが、周りの思惑に翻弄されていく。
カンヌでグランプリを受賞した、イランの巨匠アスガー・ファルハディ監督による人間ドラマ。吉田恵輔監督の「空白」なんかにも通づるものがある、拗れた人間関係が、本人の意図とは違う方向にどうしようもなくなっていく難しさを描いているけど、ある意味デフォルメされた「空白」に対して、非常に地味な分リアルでフラストレーションがたまる作品。
主人公のラヒムは、悪人ではないものの優柔不断で周りに流されやすく、口車に乗せられてドツボにハマっていく様子は人間臭くリアル。周囲の人間たちもそれぞれの思惑でラヒムを持ち上げたりおとしめたりして、本当に身勝手でイライラする。全体に男性よりも女性の方がしっかりしているように見えるが、社会的に女性には表に出られない事情があるし。
でもやっぱり一番可哀想なのは、息子だよね。