Uえい

英雄の証明のUえいのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.0
イランの映画で内情はよく分からないけど、小さな善意を祭り上げられ、しまいには名誉、誇りなど全てを毟られる男のとんでもなく悲しい話だった。

主人公のラヒムは前妻の父バーラムからの借金が返せず服役していた。刑務所から二日間の休暇が与えられ、久しぶりに婚約者ファルコンデに会うと、金貨の入った鞄を拾ったと告げられる。これを借金返済に充てようとしたが全然足りず、張り紙をして落とし主を探すことにした。

そして刑務所に電話があり、落とし主が見つかり返却できた。この話を刑務所の所長に聞かれ、美談としてマスコミを通じて公表し、刑務所の評判を上げるのに利用されてしまう。ラヒムは一躍時の人となり、慈善団体から寄付も集まったが借金には足りなかった。職も紹介されるが、SNSで嘘だという話が広がっていて、落とし主の女性を探してこいと告げられる。そして、「自転車泥棒」の様に息子と共に町を彷徨う。

その後バーラムと借金返済の交渉をするが掴み合いになり、その様子がSNSで拡散されてしまう。信用が地に落ちたラヒムは絶望し刑務所に戻るのだった。

SNSについて殆ど会話でしか出てこないのだが、世間からの目線に怯えるラヒムの表情で表現されていて凄かった。

そして最後、刑務所職員に吃音の息子を利用され、刑務所の評判を回復させる動画を撮られるが、このシーンが一番悲しかった。映画監督の様に演出までされていて、見ているこちらの感情もSNSを見た世間の様に一方的な眼差しになってしまっていたのではないかと反省した。
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