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3つの鍵のkazuoのネタバレレビュー・内容・結末

3つの鍵(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

3つの鍵
ローマの高級住宅街。同じアパートに住む3つの家族の困難を描いた群像劇。

飲酒運転による死亡事故を起こした青年と裁判官である両親。

一人娘が預けた高齢男性(認知症)と共に行方が分からなくなり、見つかったが彼の性的暴行を疑い責める父親。
その父親に好意を寄せる高齢男性の孫娘。

夫は仕事で不在な事が多く、出産に立ち会えず子育てもほぼ1人で行い孤独を感じている妻。また母親は心の病があり自分も遺伝でそうなるのでは、と恐れている。

自分本位、疑念、孤独などの要素が物語を進めて行く。

自分の罪を省みず両親を責める青年。そんな青年をなんとか救おうとする母親と自分の足を引っ張ると見限る父親。そこに被害者家族への謝罪の気持ちは見られない。

思い込みによる疑念は払拭されるべく事実が提示されても変わる事がない。そして別の出来事で今度は自身が疑念を抱かれ訴えられることになる。そして"事実"を見た時、どちらの行為に罪があると言えるのだろう…

孤独はそれが増大する事で自身が懸念していた対象に変容させる…

時の経過は凍りついた関係性を氷解させ、傷を治癒してくれる。しかし必ずしもそうではない。そしてそれは一方的に、不条理に痛みを受けた者に生じやすい。

事故被害者の夫は傷が癒えず加害者と会う事が出来ない。無実の罪で責められた認知症男性は強い疑念を抱かれ責められたまま亡くなり、その妻は疑念が払拭された時にはもうこの世にいない。

今作の内容は事件としてやSNSでの訴えなどで、または当事者や関係者として誰もが関与する普遍的テーマと言える。
見解を深めるためにも、多くの人に観て欲しい良作。
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