YUMI

ニトラム/NITRAMのYUMIのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
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無差別大量殺人犯の肩を保つわけではないけど、主人公のマーティンは本来はイイ子だったんじゃないかなと思います。
大怪我をしても近所迷惑になっても、大人になっても花火遊びがやめられないってくらいの問題があるだけで、やや発達障害っぽくて仕事にもつけてなかったとはいえ、自分から芝刈りバイトの営業に回ったりもしてるから、就業意欲がないわけでもない。
大金持ちのヘレンと知り合ってからは、犬たちの世話もちゃんとしてるし、彼女が死んだ後も家をゴミ屋敷にしたりせず、それなりに管理してる。
それに彼はとてもお父さん想いなんですよね。お父さんが民宿にするつもりで買うはずだった家を横取りした夫婦のところへ乗り込んでいくシーンにそれを感じました。ただやり方が間違ってるというか、家を買う予定だったお金で別の商売を始めようとか、そっち方面で協力してあげるべきだったのではないかと思います。
また、お父さんの葬儀に派手な服を着て現れるところも、上等な服を着てカッコいい自分を見て欲しかっただけなのかも、と。
彼の破滅の原因は、子供時代も学生時代も、そして大人になってからも、自分の居場所を見つけられなかった事だと思います。だからヘレンと一緒にいた頃が一番落ち着いていて幸せだったんでしょう。
そのヘレンが自分の悪ふざけのせいで命を落とし、大好きだったお父さんも失い、友人も恋人もいない彼には、もう居場所がなかったんだろうな。
そもそも苦手なサーフィンを通じて友人やカノジョを作ろうとしたのが間違いの元で、ネットゲームとか愛犬サークルとかで仲間を作れば良かったんじゃないのかな?
でもこの事件が起きた96年頃は、まだそんなにパソコンも普及してなかったから、SNSで人と知り合うのは難しかったか。

あとね、これは私も一人の母親として反省してるんだけど、どうも「母親」ってのは、自分の子供が人と同じであって欲しいと思い過ぎるんじゃないかなと。
マーティンのママを見てると、他人事だからそう割り切れるのかもしれないけど、あそこまでキツく花火を禁止しなくても「家の庭だと近所迷惑になるから、どっか人のいないとこでやりなさい」くらいで良かったんじゃないかと思うし、ヘレンとの付き合い(同棲、ときうよりは同居)にしても、同年代の女性との付き合いしか認めません!って態度丸出しでしたよね。
息子には人並みであって欲しいという気持ちもわかるんだけど、今の流行り言葉でいう、多様性ってものも認めてあげなくちゃ窒息しちゃう人間もいるって、今ならわかります。
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