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インフル病みのペトロフ家の文字のレビュー・感想・評価

インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)
4.3
イントラ・フェストゥム的な時間意識。現在への密着、あるいは現在の現前。癲癇とは異なるのかもしれないが、まるでペトロフ(及びその周辺の人物)が虚実の境目がなくなる例の時間(発作と言明することは些か暴力的だろうか)を意識せずともそれを欲しているようにも見える。それはともすれば、自己の外側から、根拠なく、求めたわけでもなく、不意にやって来るものなのだろうが、存外深刻そうでもないことにつよく惹き寄せられる。むしろ自身の創作活動へと昇華させている。やはりド氏本人や、彼の描いた『悪霊』キリーロフ、『白痴』ムイシュキンのアウラ体験との親和性も感じる。死に近づいた時にそれが現前することとかは特に。てか影響受けてると思う。
ただその意味で言うと、過去と現在の往還といつよりかは、例の時間はあくまで現在に従属しているのではないだろうか。
LETOもそうだったけど、相変わらずこの監督の選曲センスは素晴らしい。いわゆるヴィソツキー的なダサい音楽もそのダサさを発揮できる場所で用いている感じは流石。そして素晴らしきロシア語スラングの数々。
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