ブラックユーモアホフマン

MEMORIA メモリアのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.5
中村義洋監督『残穢 -住んではいけない部屋-』では橋本愛演じる大学生が自室の畳が擦れる音を聞き、「腰の曲がったお婆さんが箒で掃き掃除をしている」というイメージを持って気味が悪くなるところから話が始まる。

そのスピンオフ的企画の短編集『鬼談百景』の一編、安里麻里監督「影男」では根岸季衣が家の廊下の奥からバン!という、誰かが窓を叩く大きな音が一定の周期で鳴るのを聞く。

始まり方はその二つのことを思い出した。

しかし今回も気持ちよく寝させていただきました。でもそれもまた正しい鑑賞態度のような気が。目を閉じて耳から入ってくる音や、スピーカーから発せられる振動を体で受けながら、僕の脳はスクリーンに映ったものとは違う映像を見ている。現実と夢の間にある形の無いものを掴む。掴んだ途端に手放す。そういう映画体験。

一度観たこの記憶を持って、必ずもう一度観ることと思う。それはまた今回とは全然違う体験なんだろうなあ。

生と死と、過去と未来と、感覚と。ここには何もなくて、全部既にあったのか。
見たことないものも、見たことあるし、聞いたことないものも、聞いたことあるし、行ったことないとこも、行ったことあるのかもしれない。

最後のアレは『真昼の不思議な物体』。

【一番好きなシーン】
ProToolsを使って聞いた音を再現していくシーン。