Kenjo

パリ13区のKenjoのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
4.2
とても好きでした。
ベルファスト、カモンカモンに引き続き、白黒映画。流行ってるの?情報量の多すぎる現代に対するカウンターカルチャー的な?

パリ13区にある祖母の家に住む台湾系の女性、そのルームメイトになったアフリカ系の移民の男性、そしてポルノ女優に似ていることで被害を受けた女性とそのポルノ女優。4人の人間がパリで織りなす人間ドラマ。

パリと東京はかなり似てると思う。
血縁が存在しない街、よそ者に寛容ではあるがお互いに無関心で孤独を感じる街。
パリ13区を東京で言うと、東京新宿区と言った感じじゃないかと思う。
人種はバラバラであろうが、地方から出てきた上京組と少なからず境遇が似ているところがあり、共感する部分も多かった。

寂しさや孤独感、世間に対する無力感を解消するためには、人は誰かに受け入れられる必要がある。
お互いの寂しさを埋めるためにお互いを受け入れ合うという構図が都会の宿命なのかなと思った。

ポルノ女優と間違えられて恥をかき大学すら辞めてしまった女性に関しても、田舎から出てきた手前すぐには帰れないし、パリに自分の所属するコミュニティがないため、ただ自分の顔と似ていたポルノ女優と繋がりを求めていく。
それくらいのほぼ0とも言える繋がりから人間関係を構築していくのが、現代の都会の文化なんだろうなと思った。

都会におけるセックスという行為は、人が孤独感を感じずに済み、自分を受け入れてくれる場所があるという安心感を生む装置であり、血縁に守られている田舎とは少し違った意味合いを持つんじゃないだろうか。ワンナイトの多さもきっと都会のせい。

薄っぺらい人間関係が好きな人間もいるのは分かってるから肯定も否定もしないけど、都会での人間関係って人によって得意不得意はあるんだろうなと思う。
密な関係を形成するためには、数多の薄い関係性を超えなければいけないけど、よっぽど奇跡的な相性の良さとかがないと無理なんじゃないかなとも思う。

人には人の地獄があるけど、そんなこと普通に生きてたら分かんないよね

都会の若者の妙なリアルさという点でかなり高評価。
演出においても白黒にすることで妙ないやらしさが消えて、少し虚しさを感じさせる演出がGood。
ベルファスト、カモンカモンは白黒から想像させる色彩、というイメージだが、今作は割と白黒の使い方が真逆だったかなと。
燃ゆる女の肖像と同じ演出家(違うかも)ということで、フランスらしい映画手法で基礎に忠実かつ見せたいカットで強い絵を作る能力がすごい。下手すりゃただのAVになりかねないものを芸術に昇華させてるんだからすごいよね
Kenjo

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