爽

分裂の爽のレビュー・感想・評価

分裂(2021年製作の映画)
3.4
☆☆☆:一見の価値アリ
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フランス映画祭2021横浜/イオンシネマみなとみらい にて鑑賞。
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救急病院での一夜を舞台に、色んな怪我や病気を抱えた患者が押し寄せてくるドタバタ劇。
監督の手腕がとても巧みで、こういうシチュエーションものに今のフランス社会を凝縮して表現するって発想が素晴らしい。
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レズビアンやゲイといったセクシャリティーの多様性、ブルジョワ化した白人と貧困に苦しむ黒人という人種・所得格差問題。
デモを警察が実力行使で弾圧して、怪我人が押し寄せた病院はパンクするという歪な社会構造。
みんな何処かに怪我を抱えていて、助けを求めている。そして余裕が無いから自己主張に終始して、周りへの配慮に欠けている。
こういった表現はフランス社会はもちろん、現代社そのものを皮肉っていると見て間違いないだろう。
それでも苦しむ者同士、お互いの葛藤を許容し合うことで楽になれるという希望が込められていて、ただ社会問題を告発するだけではない前向きな映画になっていた。
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チワワを連れたおじさんが乱入してきて「ここは病院です!獣医はいません!」て大真面目に看護師が対応しているシーンが小ネタ的に好きだった。
あのシーンがあったからこそフィクションとして現実との間に一線が引かれていたし、モラル欠如とも受け取れるキャラたちの言動も喜劇的演出として許容できた。
爽